5-Mar-2026
個体数急増がコアラの深刻な遺伝的ボトルネックからの回復を促進
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
オーストラリアのコアラ集団についての新たなゲノム研究によると、個体数が急速に回復することで、一度は失われた遺伝的変異が回復し、これまでに個体数が激減した集団において長期的進化の可能性を取り戻すような遺伝的組換えが起こる可能性があるという。個体数の激減は、遺伝的多様性を損なうと共に近親交配を強化することから、進化の行き止まりにつながりうる。時間の経過に伴い、これらの遺伝的余波によって繁殖力、生存力、環境変化の中での回復力が弱まり、個体数の減少と遺伝的健全性の低下によって絶滅リスクが非常に高まるといういわゆる「絶滅の渦」が発生する。しかし、この遺伝的衰退は必ずしも不可逆的ではない。個体数が急速に回復すると、その増加によって遺伝的多様性が回復することがある。理論によると、小規模な創始者グループにおいてでさえ、個体数が増え続けることで遺伝子の再編成と新たな変異の導入が促進され、変異の喪失が妨げられると共に、近親交配の悪影響も軽減されるという。したがって理論的には、個体数の急増は、深刻な個体数減少に通常伴う遺伝的落とし穴に備える重要なメカニズムになりうる。Collin Ahrensらは今回、コアラの急激な減少 - 及びその結果である深刻な遺伝的ボトルネック - と急速な回復を自然実験として利用し、個体数の回復によって遺伝的回復が促進されるかどうかを検証した。Ahrensらは、オーストラリア全土の27集団から抽出した418頭のコアラの全ゲノムデータを用いて、コアラは深刻な個体数減少と遺伝的ボトルネックに耐え、遺伝的多様性は低下したものの、今のところ集団は遺伝的回復の兆しを見せていることを発見した。この発見は、この回復が一部は遺伝的組換え、つまり、既存の遺伝物質を再編成して新たな遺伝子の組み合わせを作ることによって起こったもので、個体数の増加につれて機能的多様性の回復が助けられることを示唆している。まとめると、今回の結果で個体数が激減した集団の回復は個体数の急増によって起こる場合があることが示された。これは保全管理戦略にとって重要な意味がある。
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