最新の研究によると、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ海底火山において2022年1月に発生した爆発的噴火によって、少なくとも5,000万トンの水蒸気が成層圏に直接放出され、世界的な成層圏水蒸気量が5%超増加した可能性がある。十分に研究されたこれまでの大きな火山噴火のものとは異なる大気応答が今回の事象により始まった可能性のあることが、この研究成果から示唆されている。非常に稀ではあるが、大きな火山噴火によって大量のガス、火山灰などの微粒子が大気上層に放出されると、大気上層では、噴火後数年にわたり、これらの微粒子によって大気の化学反応及び運動が影響を受ける。火山灰のほかに、含硫黄ガスが成層圏に放出されるガスの中で最も重要であるとしばしば考えられており、このような含硫黄ガスにより地球の気温低下がもたらされ、オゾン層破壊が加速される。水蒸気が直接放出されることによって火山性エアロゾルによる気候への影響の緩和に役立つと考えられているが、概して火山噴火が成層圏水蒸気の主要な発生源であるとは考えられていない。過去100年間における最も大きな噴火によってさえ、軽微な水蒸気量が放出されただけである。Holger Vömelらによると、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイのマグマ水蒸気噴火は全く異なっていた。高高度気象観測気球搭載ラジオゾンデによるその場観測結果を使用して、今回の事象によって大量の水蒸気(少なくとも5,000万トン)が成層圏に直接放出されており、成層圏の水蒸気が世界平均で少なくとも5%増加した可能性があることをVömelらは示している。観測史上前例の無い今回の事象による大気への影響は不明なままであるが、成層圏水蒸気量の増加により、この先何ヵ月も、成層圏冷却及び地表温度上昇が促進され、このような影響は(重力沈降により成層圏から落下する傾向にある)火山噴火放出エアロゾルにより引き起こされるものよりも長期化するかもしれないと今回の著者たちは示唆している。
Journal
Science
Article Title
Water vapor injection into the stratosphere by Hunga Tonga-Hunga Ha’apai
Article Publication Date
23-Sep-2022