Policy ForumではMary Blair-Loyらは、大学教員採用の際にルーブリックを用いて志願者を評価した場合、ジェンダーバイアス(性差別)を抑制できるかどうかについて論じている。Blair-Loyらは、R1ランクのリサーチ大学(総合大学)での工学部教員採用において、ルーブリック(評価基準表)を使用した場合の影響について、複数年にわたり事例研究を行ってきた。その結果、ルーブリックを使用すると採用の多様性は改善するが、特に最終選考に残った志願者を評価する際に、さらなる配慮が必要であることがわかった。実績や成果に基づいて大学教員を採用することが求められるが、多数の研究結果から、特に科学・技術・工学・数学(STEM)分野において、女性に不利なジェンダーバイアスが存在することが明確に示されている。採用ルーブリック(志願者を体系的に評価するための、標準化された一連の基準)は、採用のバイアスをなくすツールとして広く使用されてきた。多くの大学運営者や公正・多様性・インクルージョン(包摂)の専門家は、大学教員採用活動に最適であるとして、ルーブリックの使用を強く勧めている。しかし、Blair-Loyらによると、ジェンダーバイアスの解消に本当に効果があるという証拠が、全体的に欠如しているという。著者らは研究を通して、一見すると客観的なこの評価プロセスにおいても、一部の採点区分や評価者のコメントには、ジェンダーバイアスがまだ根強く残っていることを示した。Blair-Loyらは、ルーブリックの使用中止を提案しているわけではない。ルーブリックは、十分配慮して用いればバイアスを軽減し、より公正な採用プロセスを実現する助けになる。しかし、採用プロセスにおいて最大の効果を得るには、学部内で採用候補者について議論する際にも、個人バイアスと相互作用バイアスに対処するような配慮が必要である。「我々の研究結果を踏まえると、ジェンダーバイアスは、一見すると客観的なこの評価プロセスにおいてさえ、まだ根強く残っている。重要なのは、ルーブリックの使用に加えて、学部会議で採用者を議論する際にも、個人バイアスと相互作用バイアスを抑える配慮をすることである」とBlair-Loyらは述べている。
Journal
Science
Article Title
Can rubrics combat gender bias in faculty hiring?
Article Publication Date
1-Jul-2022