この数年HIV-1の高病原性バリアントがオランダで流行していると、研究者らが報告している。この新たな研究によれば、このサブタイプに感染した100例以上のクラスターにおいて、これまでになく高いウイルス量、急速なCD4 T細胞減少、および高い感染性が示された。この結果から、21世紀の初めに新規HIVウイルス株が登場した可能性がある一方、そのゲノムに広範な変化が生じているために、高い病原性の基礎にある機序を見分けることが難しいことが示されている。HIVの病原性をモニタリングすることは重要な取り組みであるのは、およそ3,800万人の人々がHIVを抱えて生きているからである。しかし、SARS-CoV-2バリアントに関する最近の研究を除けば、理論的分析を超えてウイルスにおける病原性の進化についての理解は進んでいない。現在進行中のプロジェクトBEEHIVE(Bridging the Epidemiology and Evolution of HIV in Europe)において、Chris Wymantらは特別な株であるサブタイプB HIV-1、いわゆる「VBバリアント」を有する人を100人以上特定した。このバリアントの特徴は、他のサブタイプB HIV株を有する人と比べて、ウイルス量が多く、CD4細胞減少の速度が2倍近くになることである。Wymantらによれば、こうした人々は診断されるまでに、2~3年以内にAIDSを発症しやすかった。VBバリアントのさらなる分析により、ゲノム全体にわたって300ものアミノ酸に関わる大幅な変化が示され、このために、このバリアントで特別に病原性が高い理由を理解することが難しくなっている。「より病原性と感染性の高いHIVが出現したことがわかっても、公衆衛生上の危機ではない」と、付随するPerspectiveの中でJoel Wertheimは記しており、ウイルスの病原性がどのように、またどうして進化するのかについて説明している。「2005年に『スーパーAIDS』が騒がれた時の過剰反応を忘れないようにしよう。あの時は、ニューヨークで急速に進行する多剤耐性HIVによる感染が発見されて警告が発せられたが、結局感染者は1人のみであった。」WertheimはPerspectiveの最後に、Wymantらによる研究結果が COVID-19パンデミックにとって、またSARS-CoV-2の病原性の進化にとっていかに意義のあるものであるかを説明している。
Journal
Science
Article Title
A highly virulent variant of HIV-1 circulating in the Netherlands
Article Publication Date
4-Feb-2022