640,000以上のヒトエクソームのシークエンシングによって、研究者らは体格指数(BMI)と強く関連する稀な遺伝子コーディングバリアントを同定している。これらのバリアントには、マウスモデルにおいて肥満に対する保護作用を付与したGPR75が含まれている。これらの結果は、肥満治療のための治療標的候補を示しているだけでなく、新規の臨床応用可能性のある生物学的機能を提供し得る、稀なコーディングバリアントを発見する上で、大量エクソームシークエンシングが有する力と汎用性を実証してもいる。体脂肪は遺伝性の高い形質であり、体脂肪が寄与する肥満は様々なヒト疾患、例えば糖尿病、がん、心疾患などと関係している。エネルギーバランスと体脂肪調節において遺伝的因子が重要な役割を果たしていることは知られている一方で、遺伝子や稀なコーディングバリアントによって、個人がいかにして肥満になりやすくなるか、あるいは肥満になりにくくなるかは、十分に解明されていない。これを解明すれば、肥満を治療するための安全かつ効果的な治療戦略を開発するための道筋が提供できることになる。Akbariらは、英国、米国およびメキシコの被験者645,626人を対象にエクソームシークエンシングを行い、BMIとの有意なエクソームワイドの関連を示す稀なコーディングバリアントを保有する、16の一連の遺伝子を発見した。これらのうち、脳内で発現されるGタンパク質共役受容体GPR75遺伝子が、シークエンシングを行った10,000人当たり約4人で認められ、BMIが低いこととの関連が認められた。これらの遺伝子をマウスでノックアウトしたところ、体重増加に対する抵抗性が認められ、高脂肪食下での血糖コントロールが改善した。「Akbariらの研究で例証された発見の原則は、体重調節と肥満だけに当てはまるものではない」と、Giles YeoとStephan O’Rahillyは関連するPerspectiveで記している。「大量のヒトエクソームシークエンシングは、哺乳類の生物学的機序に対する知見を発見するためのますます重要な入口になると考えられる。」
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