News Release

授賞研究からマウスの養育行動が脳内でいかに制御されているかが明らかに

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

Johannes Kohlは、2018年のEppendorf & Science Prize for NeurobiologyのGrand Prize受賞者として指名されたが、これはマウスにおいてあるニューロン集団がその養育行動を制御していることを明らかにした研究に対するものである。Kohlの授賞論文では、マウスにおいて視床下部(他の脊椎動物と共通の特徴を有する器官)の内側視索前野(MPOA)に存在するニューロンの小集団の機能について強調している。Kohlは、雌雄両方の養育行動において極めて重要であることがこれまでの研究で同定されていた、ガラニン(MPOAGal)と呼ばれる分子を有するMPOAニューロンに焦点を当てた。マウスモデルとイメージング技術(マウスの特定のニューロンの活動を記録するため)を用いて、Kohlは複雑な行動を制御するMPOAニューロンの能力の基礎にあるプロセスを検討した。彼は、養育行動において決定的に重要なニューロンプールを調べるために、マウスがその仔とやり取りをする時に最も強く活性化されたニューロンプールを同定した。Kohlは、養育行動の全ての側面において、その間にMPOAGal集団全体が活性化していた一方、驚いたことに、特定の哺育イベントの間に個々のニューロンプールが活性化していたことを明らかにした。このことは、それらのニューロンプールが養育の特定の要素を制御していることを示唆している。これらのニューロンプールには、水道周囲灰白質(PAG、運動制御に関与)、腹側被蓋野(VTA、薬物および自然報酬回路に関与する領域)、および扁桃体内側核(MeA、生得的情動行動に関与することが知られている)といった脳領域へ投射しているものが含まれていた。Kohlによれば、「これらの所見が直接ヒトに適用可能かはまだ分からない。例えば、ヒトの行動ははるかに複雑で、多くのさらなる社会的・文化的な影響に曝されている」一方で、これらの結果は社会的行動の一つがいかに脳と結びついているかを明らかにする上で大きな進歩である。ヒトでは、養育行動はストレスや精神疾患(産後のうつ病や不安)による影響を受け、これらの影響を合わせると米国の20%もの母親に認められる。したがって、生理学的状態と環境因子がこれらの脳内回路といかに相互作用しているかを研究することは、高頻度にみられる精神疾患の治療への新たな道を開く可能性がある。この賞の最終選考に残ったのはTomasz Nowakowski(論文"Building blocks of the human brain(ヒト脳のブロックを積み上げる)")およびTalia Lerner(論文"The effortless custody of automatism(機械的行動の巧みな管理)")であった。2018年の受賞者および最終候補者はhttp://www.sciencemag.org/prizes/eppendorf/2018で10月12日に公開される。

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