新規の機械学習モデルであるMal-IDは、個人が過去に罹患した感染症や疾患に関する免疫系の記録を解読できることが、新たな研究によって報告されている。このモデルは強力なツールであり、自己免疫疾患、ウイルス感染症、およびワクチンに対する応答性を正確に診断・評価できる可能性がある。自己免疫疾患やその他の免疫疾患に対する従来の臨床診断法は、身体診察、病歴、ならびに細胞および分子レベルの異常を検出するための様々な臨床検査の組み合わせに依拠する傾向があり、そのプロセスは手間がかかり、最初の誤診断や曖昧なシステムによってさらに複雑化することが多い。これらの従来法では、個々の患者における適応免疫系のB細胞受容体(BCR)およびT細胞受容体(TCR)に関するデータが十分に活用できない。BCRおよびTCRのレパトアは、病原体、ワクチン、およびその他の抗原刺激に反応して、クローン性増殖、体細胞変異、および免疫細胞集団の選択的再構成によって変化を受ける。BCRとTCRの遺伝子配列決定を行うことは、包括的な診断ツールとして、一回の検査で感染症、自己免疫疾患および免疫関連疾患を同時に検出できる可能性がある。しかし、どの程度、免疫受容体レパトアの配列決定だけで疾患を高い信頼性で幅広くs域別できるかは、依然として不明である。
この問題を解決するため、Maxim ZaslavskyらはMal-ID(MAchine Learning for Immunological Diagnosis)と名付けられた、3つのモデルから成る機械学習モデルを開発した。このモデルは、患者の免疫受容体に関するデータセットを解析して、感染症や免疫疾患、およびワクチン応答性の遺伝的シグネチャーを同定するものである。Zaslavskyらは、593人の対象者から系統的に収集されたBCRおよびTCRに関するデータを用いてMal-IDの訓練を行い、この対象者にはCOVID-19、HIVおよび1型糖尿病(T1D)の患者、インフルエンザワクチン接種者、ならびに健康対照者が含まれた。その結果Mal-IDは、BCRおよびTCRのペアサンプル550個において6つの疾患状態を効果的に識別し、マルチクラスAUROCスコアは0.986であったことから、疾患分類の精度が極めて高いことが示された。この指標値は同モデルについて、これら全ての疾患の比較において陽性者を陰性者から分類する性能を反映している。同モデルはCOVID-19、HIV、ループス、T1Dの患者および健康者を識別でき、このことは強力な診断ツールとしての能力を示しているが、Zaslavskyらは同モデルについて、臨床現場において信頼できるツールとして使用できるようになる前に、臨床データを用いてさらなる改良を行う必要があると指摘している。
Journal
Science
Article Title
Disease diagnostics using machine learning of B cell and T cell receptor sequences
Article Publication Date
21-Feb-2025