News Release

COVID-19による行動制限はインフルエンザウイルスの世界的な拡散の様相を変えた

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

19パンデミック時の旅行制限および社会的制限は、世界的に季節性インフルエンザ症例の劇的な減少をもたらし、特定地域のある種のインフルエンザウイルス株は循環と進化を続けていたことが、新たな研究で示されている。この現象は、旅行制限が少なかった熱帯地域、例えば南アジアや西アジアで認められた。季節性インフルエンザの拡散は、社会行動、特に飛行機旅行や、過去の感染やワクチン接種による免疫を回避する新たなウイルス株の定期的な進化と、密接に関係している。2020年に、COVID-19対策として非薬剤介入(nonpharmaceutical intervention:NPI)としてロックダウン政策やソーシャルディスタンスの義務化、マスク着用、そして旅行禁止などが導入されたことにより、インフルエンザウイルスの伝播と進化は劇的な影響を受けた。これらの介入のおかげで、A型のH1N1型およびH3N2型、ならびにB型のVictoria系統および山形系統のウイルスによる季節性インフルエンザ症例は、世界中で急激に減少した。

 

今回Zhiyuan Chenらは、これらの変化が季節性インフルエンザ株の拡散、分布および進化の動態にどのような影響を及ぼすのかを研究した。ChenらはPhylodynamic解析を用いて、COVID-19パンデミックの前・最中・後における疫学データ、遺伝子データおよび国際的な旅行データを統合した結果、パンデミックの開始によって国際的なインフルエンザ伝播の強度と構造に変化が生じたことを見出した。パンデミックのピーク時にはインフルエンザ症例は世界的に大幅に減少したが、パンデミックによる制限が比較的緩かった地域である南アジアおよび西アジアでは、それぞれインフルエンザA型およびインフルエンザB型Victoria系統の循環が続いていた。この循環は、パンデミック期間中におけるインフルエンザウイルスの重要な進化源、すなわち「系統樹の幹となる位置(phylogenetic trunk locations)」の役割を果たした。2023年3月までに、世界的な交通の再開とともに、インフルエンザウイルス株の循環はパンデミック前のレベルに戻ったことから、インフルエンザウイルスが長期の干渉に対するレジリエンス(回復力)を有すること、また同ウイルスの拡散が世界的な航空旅行パターンに依存していることは明らかである。ただし特記すべきこととして、今回の研究結果は、パンデミック開始とともにインフルエンザB型山形系統が消失したようであることを示しており、同系統が絶滅した可能性も示唆される。「Chenらの研究は、ウイルスの伝播、病原体の多様性ならびに抗原の進化を阻止する上で、非薬剤介入が、考えられているよりもはるかに効果的な可能性があること、そしてワクチン接種の取り組み単独よりも間違いなく効果が高いことのさらなる裏付けとなっている」と、関連するPerspectiveの中でPejman RohaniとJustin Bahlは述べている。


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