幼少期の砂糖制限(子宮内にいるときから開始)により成人期の糖尿病と高血圧を予防できることが、英国における第二次世界大戦後の砂糖配給制度時のデータを利用した新しい研究で示された。この知見は、生後1000日間の砂糖摂取量の減量により重要な長期的健康ベネフィットが得られることを強く示している。受胎から最初の1000日間(妊娠から2歳まで)は、長期的な健康にとって重要な期間である。この期間の不十分な食事は、成人期における不良な健康転帰と関連付けられている。食事ガイドラインで幼少期は糖無添加とすることが推奨されているにもかかわらず、米国では、子宮内にいるときの母親の食事、授乳、乳児用の人工乳や固形食を介して大量の砂糖に曝露されることが一般的である。さらに、研究によれば、ほとんどの乳幼児は加糖食品および飲料を毎日摂取している。Tadeja Gracnerらは、幼少期の砂糖消費が健康に及ぼす長期的な影響を研究するために、英国における自然実験(第二次世界大戦後後の長期に渡る砂糖と菓子の配給制度が1953年に終了したこと)を利用した。配給制度時の砂糖支給量は妊婦や幼児用を含めた現在の食事ガイドラインと同等であった。しかし、配給制度が終了すると、砂糖消費量はほぼ一夜にして即座に約2倍に増加した。Gracnerらは、子宮内および幼少期に砂糖の配給制度を経験した人と経験していない人に関するU.K. Biobankデータを用いて、幼少期に砂糖の配給制度を経験した人には、顕著な長期的健康ベネフィットが認められたことを明らかにした。知見によれば、糖尿病や高血圧の発症リスクがそれぞれ約35%および20%低下し、発症がそれぞれ4年および2年遅延した。防御効果は、子宮内と出生後の両方で砂糖制限を経験した場合にもっとも顕著であり、子宮内のみであればリスク低下は約1/3であった。この効果は生後6ヵ月(おそらく固形食を食べ始めた時)以降にさらに増強された。
Journal
Science
Article Title
Exposure to sugar rationing in the first 1000 days of life protected against chronic disease
Article Publication Date
31-Oct-2024