News Release

米国の森林火災は延焼速度の増加について理解することが対策の鍵

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究ではJennifer Balchらが、「現代のメガファイア(大規模森林火災)は、火災の規模に基づいて定義されることが多いが、火災の延焼速度とその結果生じる社会的影響に基づいて定義されるべきである」と述べている。Balchらは、米国において森林火災の延焼速度が過去20年間で250%以上速くなったと報告している。こうした急速に燃え広がる大火、すなわち1日に1620ヘクタール以上燃え広がるような「速い火災」は、2001~2020年における森林火事の2.7%しか占めていないにもかかわらず、研究者らの報告によると、損傷または倒壊した建造物全体の89%と、消火費用の半分以上の原因になっているという。この研究結果によって、森林火災のリスク評価、消火戦略、および地域社会の備えを改善するには、速い火災に対する理解が重要であることが浮き彫りになった。2021年にコロラド州で発生したマーシャル火災や2023年にハワイで発生したラハイナ火災など、最近の米国史上で最も激しく破壊的な森林火災のいくつかには、共通の特徴がある。それは火災発生から数時間以内に急速に燃え広がったことである。こうした急速に燃え広がる火災では、避難活動や消火活動が追いつかない場合が多く、その結果、人命の損失、インフラの損傷、および消火費用が増大するなど、重大な課題となっている。それにもかかわらず、従来の火災リスクモデルは、森林火災の燃え広がる速度ではなく、発生率、森林火災の規模、燃焼の激しさに基づいている。

 

Jennifer Balchらによると、火災延焼速度(FGR)に関する包括的な全国データがないせいで、現代における森林火災の挙動とその影響について理解が進んでいないという。Balchらは、NASAの中分解能撮像分光放射計(MODIS)の燃焼領域プロダクトをもとに、火災事象記述(FIRED)のパラメータデータセットを作成した。このデータセットを用いて、著者らは、米国本土で2001~2020年までに発生した6万件を超える森林火災について、1日あたりの延焼速度を分析した。この期間に最も急速に燃え広がった火災を調べたところ、全地域のほぼ半分で破壊的な速い火災が発生していたことが明らかになった。Balchらが、これらの事象を米国の歴史的集落データ集(HISDAC-US)および消火活動の政府記録(ICS-209-PLUS)と比較した結果、2001~2020年にかけて、速い火災が、倒壊した建造物の78%、死亡者の66%、消火費用全体の61%(18.9ドル)の原因になっていることが明らかになった。さらに、この研究結果から、2020年の米国西部における平均FGRは2001年の平均と比べて249%増加していることが明らかになり、カリフォルニア州では1日あたりの延焼速度が398%上昇しているなど、火災の速度が過去20年間に大幅に増加したことが示された。


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