News Release

脳‐神経シグナル伝達メカニズムから、片頭痛の痛みを理解する新たな方向性が明らかに

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

脳脊髄液(CSF)、ならびに皮質拡延性抑制(CSD)時に放出されたタンパク質溶質の脳内への急速な流入が、ニューロンを活性化して前兆のある片頭痛を引き起こすことが、新たなマウスの研究により示されている。この結果から、片頭痛において重要となる、脳と末梢感覚系との間に存在するシナプスを介さない新規のシグナル伝達メカニズムが明らかされている。またこの結果は、片頭痛治療のための薬理学的標的の候補を示唆している。前兆のある片頭痛は、頭痛の発症に先行して聴覚的または視覚的症状などの感覚障害をもたらすことのある独特の頭痛である。前兆期にはCSDによる脱分極の波が大脳皮質および小脳で自然に発生し、それが末梢神経系(PNS)の疼痛受容体(侵害受容体)を活性化することになる。これまでの研究から、CSD時にはCSFを介して、中枢神経系(CNS)の外部組織、すなわち血液脳関門の「外」にある感覚神経終末を活性化する小分子が放出されることが示唆されている。これら感覚神経終末は、CSFに曝露されていない。病理をもたらす皮質内のCSDイベントが、脳外の終末侵害受容器をどのように活性化するのかは、あまり理解されていない。Martin Rasmussenらは、古典的片頭痛のマウスモデルにより、プロテオミクス、組織学、イメージング、および機能的アプローチを用いて、三叉神経節においてCNSとPNSとの間で生じるシグナル伝達経路を明らかにした。CNSの遠位部位とは異なり、三叉神経節の近位部位には厳重な神経バリアが存在せず、CSFとCSD時に放出されるシグナル伝達分子が流入し、三叉神経細胞との相互作用が生じることになる。Rasmussenらは、CSDによりCSFのプロテオームの11%が変化し、三叉神経節内の受容体を直接活性化する、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などのタンパク質が増加することを発見した。関連するPerspectiveでAndrew RussoとJeffery Iliffは、「この研究は、片頭痛におけるグリンパティックシステム(グリア細胞からなる老廃物排出機能を有するリンパ様システム)の役割について、現在までで最も強力なデータの一部を提供しているが、神経生理学的プロセスにおいて体液と溶質の輸送が果たす基本的な役割については、多くの不明な点が残っており、このことから、グリンパティックシステムの機能および機能不全が、幅広い神経学的・精神医学的病態において果たす役割の理解を目指す研究は、まだ始まったばかりである」と述べている。


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.