News Release

ラッコは道具を使うことで採餌成功率が上がり、歯の健康も増進する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

ラッコは、殻や石といった道具を使って餌である軟体動物の厚い殻を割り開けることで、採餌の成功率を上げるとともに、そうしなければ食べにくい餌を食べられるようにして歯の損傷を防いでいる。この発見は、この行動が、競争が激しく、好みの餌も不足している環境において、一部のラッコの生存に必要であることを示唆している。ラッコが道具を使うことはよく知られている。歯で獲物を噛み砕く以外にも、石、殻、人間が出したゴミ、さらにはボートの船体まで使って、海貝、ウニ、ハマグリといった硬い獲物を叩き割ることが観察されている。一般的にラッコは、カロリーが高いだけでなく、処理も簡単な獲物を採るのを好む。しかし、ラッコがひしめき合って生活している地域では、種内競争によって捕獲しやすい獲物が枯渇するようになり、それによって一部のラッコが別の魅力的な獲物に特化してしまう可能性がある。そしてそれは、採餌のための道具使用への依存に影響を及ぼす。Chris Lawらは、無線タグを付けた196頭のラッコから得られた縦断データを用いて、道具を使うことで、捕食できる殻の硬い獲物の種類が増えて個々のカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の採餌成功率が上がるかどうか、また、歯の損傷が防がれて適応度が上がるかどうかを調査した。Lawらは、一般的に、頻繁に道具を使用することで捕食できる獲物の種類が増え、それによって、エネルギー消費率が上がり、歯の摩耗も減少することを発見した。しかし、このパターンは線形ではなく、たまに道具を使うラッコの中には、まったく使わないラッコより歯の損傷がひどいラッコもいた。これはおそらく食の特殊化によるものと考えられる。道具が必要な捕食を好むラッコは、どの種類の獲物を採るにも道具を使う傾向がある。一方、道具なしで採れる獲物を好むラッコは、絶対に必要ではない限り道具を使わない傾向があるため、歯を損傷する ―― ひいては適応度全体が低下する ―― リスクがある。道具使用への依存が高いほど、硬い獲物を処理する頻度も高く、結果、採餌成功率が上がるという現象がメスだけに見られた。このことは、道具を使うという行動がメスにとって不釣り合いなほどに有益であることを示唆している。おそらくこれは、メスは体が小さく、噛む力も弱いことを考えると、硬い獲物を処理する際のそういった身体的制約が道具の使用で克服できるためと考えられる。関係するPerspectiveではBarbara Klumpが今回の研究についてさらに詳しく論じている。


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