News Release

有機農地に隣接する従来型農地では農薬使用量が増加するが、隣接する有機農地では減少する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

米国有数の作物生産地域を対象とした研究によると、有機農地を拡大すれば、近隣の従来型農地では農薬使用量が増加する一方で、近隣の有機農地では減少するという。今回の研究結果によって、これまで見過ごされていた有機農業が環境へおよぼす影響について手掛かりが得られるとともに、有機農地を密集させれば景観規模で農薬使用量を減らせることが示唆された。有機農法は、集約農業に比べて、その地域の環境に対する悪影響が少なくなるように工夫されている。しかし、より広い環境におよぼす機能的な影響はほとんど分かっていない。有害な化学農薬も遺伝子組換え種子も使用しない有機農地は、害虫や益虫が多い場合もあれば少ない場合もあるため、従来の方法で管理された農地とは機能が異なる可能性がある。こうした虫の一部が周辺地域に拡散することで、近隣農地における害虫駆除の判断に影響がおよぶ。カリフォルニア州カーン郡(米国有数の作物生産地域であり農薬使用量の多い郡)にある約1万4000ヵ所の農地において10万回近く行われた観測から得られた農薬使用データを用いて、Ashley Larsenらは、有機作物生産が周辺の有機農地および従来型農地の農薬使用にどのような影響をおよぼすかを評価した。Larsenらは、有機農地の周辺にある有機農地では農薬使用量が減少するが、従来型農地では増加することを明らかにした。従来型農地における農薬使用量は、近隣の有機農地から離れるほど減少した。著者らは、異なるタイプの農地の空間配置をモデル化することにより、有機農地と従来型農地を空間的に分離すれば害虫を管理できることを見出した。有機農地が占める面積の割合が小さく、景観全体に散在する場合、有機農業の拡大によって景観全体としては農薬使用量が増加する。しかし、有機農地を密集させると、波及的な影響が軽減されるため、有機農地と従来型農地の両方で全体的な農薬使用量が減少する。従来型農地において農薬使用量が増えるのは、有機農地から害虫があふれ出すせいなのか、それともそれ以外の農業者の意思決定プロセスによるものなのかは不明である。関連するPerspectiveではErik Lichtenbergが、「Larsenらが行った分析では、農薬使用量が近隣農地の特性に左右される可能性が報告されているが、そうしたパターンが生じるメカニズムは明らかにされていない」、「そのメカニズムを解明するためには、生態学的および経済的なフィールドワークが引き続き必要である」と述べている。


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