外来種の侵入は生態系の予期せぬ大きな変化につながることがある。このようなことを、Douglas Kamaruらがケニアの自然保護区におけるオオズアリ、アカシア、ゾウ、ライオン、シマウマ、バッファローのつながりを追跡した独自の入念な研究で実証している。侵入種であるオオズアリは、在来種のアリとその生息域のトゲアカシアの相利共生、つまり、在来種のアリはアカシアを草食動物から守り、その見返りとして住処を得るという関係を崩壊させた。Kamaruらはオルペジェタ自然保護区での観察、実験区、動物追跡を併用して、この崩壊が引き起こした生態系の連鎖反応を追った。侵入種のアリが在来種のアリを追い出すと、アカシアはゾウに食い荒らされるようになった。侵入種のアリがいる地域ではいない地域と比べて5から7倍ものペースでゾウがアカシアの木を食い荒らし、へし折っていた。その結果、見晴らしがかなり良くなり、ライオンにとってはシマウマという好物の獲物を気付かれないように見張って追い詰める場所がなくなった。ライオンは、オオズアリの非侵入地域では侵入地域より2.87倍多くシマウマを仕留めていたのだが、アフリカバッファローを多く捕獲するなど、獲物を変えてこの事態に対応していた。2003年から2020年で、ライオンが仕留めるシマウマの割合は67%から42%へと減少、一方、バッファローは0%から42%に増加した。関係するPerspectiveではKaitlyn Gaynorが、本研究から相利共生の崩壊が生態系全体に引き起こす反響の重大さが見えてくると述べている。「突き詰めて言えば、健全な生態系の保全には種の絶滅を阻止するだけではなく、種間の最も重要な相互関係を特定して維持する必要がある」とGaynorは書いている。
Journal
Science
Article Title
Disruption of an ant-plant mutualism shapes interactions between lions and their primary prey
Article Publication Date
26-Jan-2024