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天然物に基づいて設計した低分子薬は「アンドラッガブル(創薬の対象とすることが不可能)」な標的をターゲットにする

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい低分子薬が、天然の細胞シャペロンであるシクロフィリンA(CYPA)を活性状態の発癌性変異体KRASG12Cに結合させることによって、癌の発癌性シグナル伝達と腫瘍増殖を阻害することが、複数のヒト癌モデルで示された。このアプローチを使用すれば、他の発癌性KRAS変異体や他の発癌要因も標的にできる可能性がある。低分子薬剤は、標的タンパク質の表面にあるポケットに結合することでその機能を阻害する。多くの場合、このようなポケットのないタンパク質はアンドラッガブルであると考えられている。KRASは低分子グアノシントリホスファターゼ(GTPase)であり、活性状態になると細胞の成長と増殖を調節する。KRASの変異は、複数の癌でよくみられ、最も一般的な癌遺伝子の1つである。しかし、表面が比較的平らで明らかな結合ポケットがないことから、長い間、アンドラッガブルであると考えられていた。最近、不活性状態のKRASG12Cバリアントを選択的に標的とする阻害剤について、いくらか臨床的有望性が示された。しかし、活性状態のタンパク質を標的とする従来の低分子薬は明らかにされておらず、KRAS阻害への革新的なアプローチの必要性が示唆されている。このニーズに対処するために、Christopher Schulzeらは、KRASG12Cの活性状態を間接的に標的にする低分子を、天然物に基づいて設計した。Schulzeらは、豊富に存在する天然化合物CYPA(タンパク質恒常性の制御を支援する細胞シャペロンの一種)に結合する化合物(RMC-4998)を作成したのである。結合すると、複合体は活性型KRASG12Cを選択的に標的とする。得られたCYPA-薬剤-KRASG12C三重複合体は、発癌性シグナル伝達を阻害し、複数のヒト癌モデルにおいて腫瘍を退縮させたことが明らかになった。「手に負えないと思われた活性状態のKRASG12Cを征服できたことで、このアプローチが他のKRAS変異体、低分子GTPase、三量体Gタンパク質、さらには他のクラスの「アンドラッガブル」な標的にも適用できるかどうか検討することは興味深いことだろう」と、関連するPerspectiveでJun Liuは述べている。


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