新しい研究によると、南カリフォルニアでの更新世の大型動物相の絶滅は、気候変動と人間活動の影響によって脆弱化が進んだ生態系での大規模火災が引き起こしたという。この研究結果は、ラ・ブレア・タールピッツで発見された化石の新しい放射性炭素年代学による年代決定で得ることができたもので、更新世の絶滅の一因となった動力学を理解する際の手掛かりとなるだけでなく、現代の生態系の変化を理解するための情報にもなる。「更新世末に南カリフォルニアの生態系の状態を変えた状況が、今日、アメリカ西部一帯や世界各地の多数の生態系で再発している」と著者らは書いている。「また、過去のこの絶滅イベントを引き起こした際の気候変動と人為的変化の相互作用を解明することは、同様の緊迫した状況にある生物多様性の今後の喪失を軽減するのに役立つと考えられる。」
最終氷期末、世界各地に生息していた地球の大型哺乳類のおよそ3分の2が絶滅した。この絶滅 ―― 新生代で最大 ―― は、第四紀後期の気候変動と大陸全域での人口の増加および拡大と同じ時期であった。しかし、更新世末の大型動物相の絶滅のタイミング、原因、結果の解明は難しい。この絶滅イベントに関する知識の大半は断片的な古生物学的記録に依拠しており、そういった記録は種消滅のタイミングを考古学的データや環境データと比較するのに必要な正確な年代順が欠けている。ラ・ブレア・タールピッツ(ランチョ・ラ・ブレア) ―― 55万年以上前から完新世にかけて更新世の大型動物相がロサンゼルス盆地に生息していたことを示すほぼ連続的な記録が残っている場所 ―― に保存されている大量の化石を使って、Frank O’Keefeらは、南カリフォルニアで大型動物相の絶滅をもたらしたと考えられる要因を調査した。O’Keefeらは、172頭の大型動物について新しいAMS法による放射性炭素年代を入手して、現在より15,600年から10,000年前にラ・ブレアで最も多く生息していた哺乳類8種について高精度放射性炭素年表を作成し、そのうち7種は12,900年前までにこの地域で絶滅したことを発見した。次に彼らは、その地域の堆積物コア記録を使用し、そこの古気候および古環境の記録、そして北米における大型動物相絶滅と人口増加についての大気規模の分析から、それらの絶滅のタイミングを検討した。その結果によると、ラ・ブレアでの大型動物相の消滅は、北米での大型動物相の絶滅より少なくとも1,000年以上前、ヤンガードリアス気候イベントより前、14,600年から12,800年前に起きた短い気候温暖化イベントであるベーリング・アレレード期の終わりの植生変化と乾燥と同じ時期であったという。さらに、この記録から同地域で大規模火災が増加していたことが判明し、これがラ・ブレア地域の大型動物相絶滅の主な原因ではないかとO’Keefeらは推測している。要約すると、O’Keefeらは、この火災増加は気候変動に起因する温暖化と乾燥、併せて、火災が発生しやすくなっている生態系での人間による狩猟や野焼きの影響の拡大の結果ではないかと論じている。
Journal
Science
Article Title
Pre-Younger Dryas megafaunal extirpation at Rancho La Brea linked to fire-driven state shift
Article Publication Date
18-Aug-2023