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新しいツールの使用により、ゾウアザラシの睡眠は1日わずか2時間で、捕食者がいない水深での短時間の潜水中にその睡眠を取っていることが判明

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

哺乳類の睡眠の最短記録に匹敵するのだが、キタゾウアザラシは1日2時間しか眠らず、その2時間は、普通は捕食者がいない水深でのうたた寝のような小刻みな一連の「潜水睡眠」である。今回の研究結果 ―― 海での睡眠を検出する新しいツールを活用 ―― は、捕食されるのを回避しながら眠らなければならない動物の睡眠行動を解明するうえでの手掛かりとなる。睡眠は全ての哺乳類にとって欠かせない生活の一部であるが、長時間安心して眠ることができない環境で生きる哺乳類もいる。その結果、野生動物には日々の睡眠の必要性と自分たちの生態系及び捕食リスクの均衡を保つ多様な睡眠戦略が見られる。外洋に生息する海洋哺乳類はそばに捕食者がいて、類のない厳しい状況に置かれている。これらの動物がどのように必要な睡眠を取っているかはほぼわかっていない。Jessica Kendall-Barらは新しい遠隔モニタリングシステムを使って、野生のキタゾウアザラシ(Mirounga angustirostris)の睡眠行動を評価した。キタゾウアザラシは大型のアザラシ種で、採餌のために7ヵ月間、10,000キロ以上にわたって海を回遊することが知られている。この遠隔モニタリングシステムで、制御された実験室環境にいるアザラシとカリフォルニア州モントレー湾の自由な野生ゾウアザラシを対象に、それらの脳活動、心拍数、3次元空間移動を非侵襲的に記録した。これらのアザラシは、共通する捕食者の生息域より深い、水深数百メートルに潜っている間に、短時間 ―― 多くは20分未満 ―― のうたた寝をしていた。アザラシは、これらの潜水睡眠に入るとすぐに、覚醒状態での潜降から徐波睡眠(SWS)に移行した。この段階ではアザラシは真っ直ぐな姿勢を維持していたが、SWSから急速眼球運動(REM)睡眠に移行すると、睡眠麻痺で姿勢が制御できなくなった。REM睡眠中のアザラシは仰向けになり、「螺旋を描くように眠る」という漂いながらの潜降をしていた。これらの短い睡眠サイクルの後、アザラシは覚醒し、水面に戻った。この戦略によって、アザラシは捕食リスクの低い水深で完全なREM睡眠に入ることができる。このデータを組み合わせて、Kendall-Barらは、334頭の野生アザラシを対象とした睡眠の時間と深度を記録した20年間にわたるデータセットの中から潜水睡眠を特定できる「睡眠の生物力学的特性」を導き出すことができた。これらの記録から判断した睡眠パターンから、ゾウアザラシは外洋で過ごす7ヵ月間、平均して1日にわずか2時間しか眠らないことが判明した。関係するポッドキャストは4月20日、https://www.science.org/podcastsで公開されることになっている。


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