土星にかつて存在した衛星の崩壊によって土星は傾き、若い環ができたのかもしれない

研究者の報告によると、土星にかつて存在した衛星の崩壊によって、土星の象徴的な環が最近になってできた理由と、自転軸が傾いている理由を説明できる可能性があるという。約1億年前に形成されたとみられる土星の環は、太陽系の惑星のなかでも特に目立つ特徴である。しかし、環が形成された時期がこれほど最近である理由については、ほとんどわかっていない。さらに、土星の傾き（赤道傾斜角）や、土星最大の衛星タイタンの奇妙な軌道についても、詳しい理由はまだ解明されていない。この問題に取り組むため、Jack Wisdomらは探査機カッシーニから最近得られたデータをもとに数値シミュレーションを行い、これら3つの謎に対する答えを提示した。Wisdomらは、土星系は約1億5000万年前に激しいイベントを経験し、その際に、かつて存在した衛星（彼らはクリサリスと命名）は軌道が不安定になって、土星にあまりにも近づいたため、潮汐力によって引き裂かれ、土星の環ができたと主張している。著者らによると、このイベントによってタイタンの離心率が増加して、現在の高い離心率になった可能性があり、土星の赤道傾斜角もこれで説明できるという。関連するPerspectiveではMaryame El Moutamidが「Wisdomらが提示したメカニズムによって、土星と海王星の歳差周期が共鳴を起こす状態に近い理由や、土星の環が最近できたように見える理由を説明できる」と述べている。「彼らの主張をさらに裏付けるためには、さらなる研究を行って、土星の極慣性モーメントを明らかにするとともに、環をもつ他の惑星でも同様のイベントが起こったかどうかを明らかにする必要がある。」