News Release

特集号:ヒトゲノムに関する応用研究 ―― 進歩と可能性

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

Science Senior EditorのLaura Zahnは、Scienceの特別号の緒言において「一部には、ヒトゲノムの解明[20年前の時点]により医学上の奇跡が急増することを期待する意見があったが、この分野はゲノム研究からの寄与による継続的なリレー競争にほかならない」と記している。本特集では、1本のPolicy Forum、1本のPerspective、4本のReviewおよび2本の関連News storyにおいて、ヒトの進化、がん、多遺伝子形質、および機能ゲノミクスに関する理解において、ヒトゲノムに関する応用研究が勝ち得られた成功について検討している。

 

Policy Forumでは、Natalie Ramらは、犯罪の捜査における消費者の遺伝データ使用に対する法的処置の適用を包括的に規制する、米国、そして世界において初の法律を取り上げている。この法律は、メリーランド州で2021年5月に制定された。それまでは、消費者の遺伝データ使用に対する法的処置の適用における主たる制限は、消費者の遺伝データを扱うプラットフォームそのものに由来しており、その一部は協力を拒否している。著者らによれば、この新法の成功は「プライバシーと公共の安全とのバランスを取るような形で、遺伝子系図に関する規制を行うためのロードマップを示すものであり、その規定条項には、他の政府機関が今後のために見本とすべき6つの極めて重要な内容が含まれている。

 

Jennifer E. RoodとAviv Regevによる本特集のPerspectiveでは、ヒトゲノムプロジェクト(HGP)による配列に関する最初の報告の発表以降にみられた進歩について考察している。著者らによれば、このイニシアティブは絶えず生物医学に変化をもたらしてきたが、その真の可能性を実現するには成すべき研究が残っている。「HGPには、この20年を経てもまだ完了していない重要な課題が我々には残されている。それは、ゲノム情報がどのようにして細胞および器官の発達、機能、および機能不全につながるのかについて理解すること、そして人々の健康を促進し、疾患を治療するために、この知識を十分に利用することである」と、RoodとRegevは述べている。

 

4本のReviewでは、疾患リスクの高い人を同定するための多遺伝子(リスク)スコアの有用性と、それによる予防および早期介入の促進、がんの経過全体を通じての悪性細胞状態の分子的進化を理解するために異なる種類のデータを統合することの重要性、新規手法を用いて遺伝子バリアントが表現型に影響を及ぼす生物学的機序を理解することの重要性、ならびにDNAシークエンシング技術および実験調製プロトコールにおける最近の進歩が、どのようにこの10年間で古代DNA研究の視野を拡張してきたか、といったトピックが取り上げられている。

 

Scienceのニュース部門のリポーターJocelyn KaiserのNews storyでは、いまだに多くの倫理的・実用的な障害に直面している新規ゲノムシークエンシングの有望性についてレビューが行われている。そうした障害があるにもかかわらず、英国の1企業が大規模な試みを推進している。このGenomics Englandは、200,000人もの赤ちゃんを対象とした大規模パイロット研究を計画している。ヒトゲノムに関する別のNews storyでは、リポーターMitch Leslieが、自己炎症性疾患を疾患の1カテゴリーとして明らかにしたことで、また共同研究によってそうした疾患を誘発する14の異常遺伝子を同定したことで知られている研究者であり医師であるDan Kastnerを紹介している。自己炎症性疾患を誘発するものを同定したことで、Kastnerの研究はこれらの患者にとって生活を変え、生命を救う治療への扉を開いた。


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