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糖尿病 特集号:治療における進歩、治癒への希望はいまだ消えず

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

100年前には、1型糖尿病の診断を受けることは一様に死の宣告を意味したが、1921年のインスリンの発見はこの疾患に対する希望をもたらし、1型糖尿病は慢性疾患の1つになった(ただし、それでも生涯にわたる煩わしい治療を要する)。Scienceの今回の特別号では、1本のPolicy Forumと4本のReviewにおいて、この100年間においてこの疾患に対する研究者らの理解を拡大した科学的進歩と、拡大しつつある利用可能な治療選択肢について論じられている。しかしこれらの著者である専門家たちは、依然として存在する課題から目をそらしていない。「このよくみられる、しかし有病率が上昇しつつある疾患の治療に取り組んで第二の世紀に入っているいま、予防または治癒を最終目標として、これらの課題を克服するには(さらなる)研究が必要である」と、ScienceのSenior EditorであるYevgeniya Nusinovichは本特集号の緒言で記している。

インスリンは、世界中でこれを必要としている5千万人あまりの人にとって、利用可能性が限られていることと購入する経済力が不十分であることから、手の届かないままである。Abhishek SharmaとWarren KaplanはPolicy Forumの中で、世界におけるインスリンの利用可能性とそのニーズについて、リアルワールドのインスリン取引データと糖尿病の疫学的推定データに基づいた分析結果を提示している。SharmaとKaplanは、インスリンの国内生産を行っていない一部の国は、ニーズに対してインスリンの余剰があるようであることを示している。他の国々、特にアフリカやアジアの国々では、推定されるニーズに対してインスリンの輸入が依然として不足している。著者らによれば、一国における輸入インスリンの余剰と国民の推定されるニーズとの間にある格差は、市場競争、不十分な供給、および医療システムにおける財政・供給の機能不全によるものである。インスリンを必要とする患者に対する利用可能性を改善するためには、複数の利害関係者の手による協調的な現場での取り組みが必要である。「インスリンへのアクセスについては、より広い医療システムの中で枠組みを作る必要があり、全ての分野、すなわち公共部門、民間部門、製造部門、規制機関、ならびに研究者および臨床医が、患者に対する適切な糖尿病医療を実現するために力を合わせる必要がある」と著者らは記している。

1型糖尿病(T1D)の治療薬としてインスリンが発見されて100年経ったが、この20年間にインスリンの送達法には大きな進歩がみられたものの、T1Dの小児および成人で最適なレベルの血糖コントロールを達成できているのはごく少数である。同様に、T1D患者の生存期間が延びたことで、インスリン療法を受けているにもかかわらず発生する失明などの長期合併症の問題が明らかになってきた。今日では、完全にインスリンの必要性をなくした代替治療法が利用可能になっている。これには、自己免疫疾患プロセスを早期(症状発現前)に止めること、あるいはそもそも自己免疫の発現を予防することのいずれかが挙げられる。Colin DayanらはReviewの中で、この代替治療法が、特に小児においていかにして達成されうるのかについて論じている。別のReviewにおいてJeffrey Bluestoneらは、自己免疫疾患としてのT1Dに焦点を当てている。著者らによれば、インスリンの発見と使用はT1Dの治療を変えたが、それによって基礎にある自己免疫疾患は変わったわけではない。Bluestoneらは、インスリン産生細胞を破壊する免疫細胞種を明らかにした過去20年間の研究をレビューして、免疫学的療法の現状、ならびにT1D治療におけるその強みについて論じている。また別のReviewでは、T1Dに対する細胞療法の有望性に焦点が当てられている。細胞療法は、植え込まれた細胞が血糖値を感知して反応し、コントロールできるというものであり、Todd M. Bruskoらが、幹細胞生物学および移植部位デザインにおける進歩に焦点を当てている。4本目のReviewでBruce Perkinsらは、T1D患者にとっての、T1Dを管理する上での課題について考察している。著者らによれば、患者アウトカムの改善における将来的に最も大きな成果は、新たな薬理学的治療法と既存のインスリン自動送達法の組み合わせによってもたらされることになるという。その上で、全ての糖尿病患者における治療技術の受容性を高めるには、さらなる革新が必要となるであろうと指摘している。


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