気候変動を受け、多くの種が地球の両極に向かって移動している――そして、その過程で生息域が縮小しているという。2つの新しい報告では、陸生生物よりも高い割合で極方向へ移動している海洋生物に注目し、気候変動とは直接関係のない因子を含め様々な因子がいかに魚類とサンゴの生息域を制限しているかを示している。まず、Paul Muirらは104種の造礁サンゴ(総称してミドリイシと呼ばれるもの)を調べ、日射によってサンゴの生育域が一定の水深に制約されるという仮説を確認した。しかも、特に冬は高緯度になるほど、日光は表層水を透過しないので、日光に依存するサンゴは赤道から遠ざかるにつれて、より浅い水域に生息せざるを得ないのだという。Muirらは、サンゴが極方向への移動を続けるためには、移動によって緯度が1度上がるごとに、最大水深を約0.6メートル減少させなければならないと示唆している。しかしミドリイシは、水温、塩分濃度、波やうねりによる損傷といった問題によって制限を受ける前に、浅い所に移動しなくてはならないという。Curtis Deutschらによる別の研究では、海水が温暖化すると酸素量が減ると同時に代謝要求が増えるので、多くの魚の生息域は約20パーセント縮小することが示唆された。彼らはタラ、イチョウガニ、タイ、ゲンゲといった種の代謝と地理的分布を調査し、代謝指数(利用可能な酸素量と安静時の生物に必要な酸素量の比)のマップを作成した。もし気候変動がこのまま続けば、赤道付近と一部の北方高緯度地域では、必要な代謝指数を酸素濃度が下回り、種の生息域が縮小するだろうと、彼らは示唆している。Perspectiveでは、Joan Kleypasが「分散を妨げる目に見えない障壁」についてさらに詳細に論じている。
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Article #12: "Limited scope for latitudinal extension of reef corals," by P.R. Muir; C.C. Wallace; T. Done at Museum of Tropical Queensland in Townsville, QLD, Australia; T. Done at Australian Institute of Marine Science in Townsville, QLD, Australia; J.D. Aguirre at Massey University in Albany, New Zealand; J.D. Aguirre at University of Queensland in Brisbane, QLD, Australia.
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