数千もの消費生活用製品に使用されている抗菌性添加物トリクロサンが、マウスの結腸の炎症を引き起こし、結腸癌を悪化させることが明らかになった。このハッとさせられるような結果は、保健当局がこのありふれた成分の使用に関する規制政策を再評価すべきかどうか検討する可能性を示唆している。トリクロサンは、練り歯磨きから化粧品やおもちゃに至る2,000を超える消費生活用製品に使用されており、非常に広く使用されているために、米国人はすべて、生活のいずれかの時点でトリクロサンにさらされている。研究から、高用量のトリクロサンに毒性作用がある可能性が示されているが、ヒトが曝露されうる低濃度のトリクロサンが健康に及ぼす影響は明らかにされていなかった。今回、Haixia Yangらが、マウスに様々な濃度のトリクロサンを含むエサを3週間与えた。その結果、ヒトの血液検体で報告されている濃度を反映する濃度のトリクロサンを与えたマウスに、対照マウスと比較してより全身的な慢性炎症が認められたことが明らかになった。さらに、トリクロサン曝露は、炎症性腸疾患(IBD)のマウスモデルの結腸の炎症の重症度を高め、この影響は低濃度のトリクロサンを投与した場合でも持続した。トリクロサン投与は、結腸癌を持つ別のげっ歯類群の腫瘍のサイズも増加させ、生存率を低下させた。興味深いことに、トリクロサンはマウスの腸内共生細菌の多様性を低下させ、無菌マウスは有害な影響を受けなかった。このことは、炎症誘発作用が腸微生物叢の変化に起因している可能性を示唆している。Yangらは、今後の研究で、トリクロサンがヒトの腸の健康に与える影響を評価し、IBDや結腸癌患者が有害な影響を被りやすいかどうかを決定すべきことを強調している。
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Journal
Science Translational Medicine