肝臓腫瘍細胞のHippo分子シグナル伝達経路を活性化すると腫瘍が増殖するが、腫瘍の周囲にある健康な細胞の同じ経路を活性化すると腫瘍増殖が抑制される。この予期せぬ影響は、腫瘍細胞とその周囲の組織の間に競合的相互作用があることを示していると、Iván Moyaらは述べている。Hippo経路および特にそのうちの2つの要素、転写コアクチベーターYapおよびTazは、実験的な研究で腫瘍増殖のドライバーであることが明らかになり、癌治療の標的候補となっている。しかし、Moyaらによる新しい知見で、全身のYapおよびTazを阻害すると、腫瘍周縁部で健康な細胞による腫瘍抑制能が阻害されることで、望まれない結果となる可能性があることが示唆された。Moyaらは肝癌のマウスモデルで、腫瘍の周囲にある細胞のYapおよびTazの活性が腫瘍細胞の細胞死を促進したことを明らかにした。また、肝臓腫瘍細胞が自らの生存をYapおよびTazに頼っている一方で、この影響が周囲の細胞のYapおよびTazの濃度と関連していたことを確認した。腫瘍細胞よりも周囲の細胞のYapおよびTazの活性の方が高いと、腫瘍は縮小する。しかし、周囲の細胞のYapおよびTazの活性が中和されるとリバウンドする可能性がある。
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