2件の新たな研究が、それぞれコウモリとラットの海馬において、同じ種の他の個体の空間的位置を特異的に解読するニューロンのサブセットを同定した。これまで研究者らは、自己自身の位置を知覚するニューロンを同定することはできたが、驚くべきことに、他の個体の位置が脳内でどのように知覚されているかはほとんど知られていなかった。しかし社会的動物の場合、他の個体の位置を知ることは社会的相互関係、観察による学習、およびグループナビゲーションのために重要である。コウモリを対象とした第一の研究でDavid Omerらは、観察する役割の一匹のコウモリが、飛行して着地する2つのボールのうちの一つに向かって仲間のコウモリが飛んでいくのを見るという実験をデザインした。わずかな時間をおいて、観察役のコウモリは、報酬を受けるために同じ飛行コースを辿るようにさせた。観察役のコウモリがこの課題を実行する間に、研究者らはコウモリの海馬内の350を超えるニューロンの活動を記録した。飛行するボールのうちの一つを追って、飛行するコウモリの代わりに無生物の物体を移動させて、観察役のコウモリに対して正しい飛行コースを示すという、同様の実験を行った。二つの着地点の間で、また生きたコウモリと無生物の物体の間でニューロン活動を比較することで、Omerらは観察役のコウモリの海馬において、飛行してみせたコウモリの空間的位置を特異的に解読するニューロンのサブセットを同定することができた。著者らは、生きたコウモリと無生物の物体におけるニューロンの知覚の間に複数の違いを発見した。例えばニューロンには、物体の場合よりも生きたコウモリの位置を解読する際に、より高い「空間解像度」を示す傾向があった。
第二の研究でTeruko Danjoらは、迷路において一匹のラット(「自己」ラット)が、もう一匹のラット(「他者」ラット)の位置に基づいて、報酬を得るために左か右かの選択をするようにさせる実験をデザインした。自己ラットは、他者ラットが居るのと同じ側に行った場合に報酬をもらうか、逆の側に行った場合に報酬をもらうかの2種類のシナリオで訓練を受けた。研究者らは、このような空間的な目標と位置の違いを用いて、他のラットの位置を特異的に解読する海馬中のニューロンを同定した。
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