適切なサイズのカーボンナノチューブは生体タンパク質より効率良く水を透過させることが新しい研究によって示された。淡水の需要が持続可能な開発にとって世界的な脅威となっている時代、この研究結果は新しい水の透過システムへの道を切り開くものと考えられる。アクアポリンと呼ばれる生体タンパク質の類は効率的に水を透過させるが、同じような能力を持つ大規模に実現可能なシステムは作り出されていなかった。アクアポリンは一般的に0.3ナノメートルという狭い幅で水分子を一列縦隊にして透過させるチャネルである。Ramya H. Tunuguntlaらは今回、水の透過に最適な幅を突き止めるべく、様々な幅のナノチューブで実験を行った。興味深いことに、幅0.8ナノメートルのカーボンナノチューブがアクアポリンより透過効率が6倍も優れていることが判明した。このカーボンナノチューブポーリン(nCNTPs)も幅は狭く、この細さで水分子を一列縦隊にするには十分であった。アクアポリンとnCNTPs の差異は水素結合の違いに起因するとTunuguntlaらは考えている。アクアポリンでは、細孔の並んだ残基が水素結合のドナーとなったりアクセプターとなったりして、水分子を流入させる。一方CNTPでは、その壁は水素結合を形成できず、水はスムーズに流入する。今回の研究でのnCNTPsは一般的な塩水の塩分濃度を超えても透過性を維持していた。ただ、塩濃度が極めて高い場合には低下していた。 最後にTunuguntlaらは、ナノチューブの口の所で電荷を変化させることによりイオン選択性を変えられることも発見した。この科学的前進についてはZuzanna SiwyとFrancesco FornasieroがPerspectiveで取り上げている。
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