環境中の非晶質炭酸カルシウム(ACC)から無機質の骨格を作る、ウニやコッコリス(円石)から発想を得た研究者は、圧力による融合を行えば、ACCナノ粒子の単一化合物から成るミネラルやセラミックを作れることを実証した。この研究結果は、従来のセラミック焼結法を進歩させたものであり、温度に敏感なバイオミネラルやバイオマテリアルの単一化合物(モノリス)で他の材料を作成する際に役立つことがわかった。無機材料は現代科学技術に不可欠なものである。しかし、現行の焼結技術は材料の連続性を破壊し、その機械的強度を制限しかねないため、無機質のモノリスを合成するのは難しい。特にACCはこの特徴が顕著であり、比較的硬質な材料であるにもかかわらず熱に弱く、圧縮されると堅固な結晶構造を形成する傾向がある。自然界の生物は、ACC粒子を用いて柔軟で強力な無機質の外骨格を作る方法を編み出してきた。今回、Zhao Muらは、同様のACCモノリスを圧縮によって作製できることを示した。構造的に結合した水の量とACC粒子の外圧を調整して、試料全体を結晶化させることなく粒子境界を融合させることで、単結晶の方解石と同等の機械的強度をもつ透明なモノリスを作製することに成功した。著者らによると、このプロセスは多数の非晶質粒子が用いられる骨格のバイオミネラリゼーションよく似ており、継続的に構成される無機質モノリスを大規模かつ効率的に作製することが可能になるという。
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