併用療法によって、高齢者の免疫系が感染症と戦う能力を安全に促進できることが明らかになった。第2a相臨床試験の結果は、この治療が、若年者に比べて免疫系が弱い高齢者のインフルエンザや肺炎などの感染症発症率や健康上の負担を低下させる治療の基礎を築けることを示唆している。感染症は65歳を超える高齢者の主な死因となっており、このため、免疫系が脅威を認識し中和する能力を回復させる方法を検討することとなった。これまでの研究で、高齢マウスではTORC1と呼ばれるタンパク質複合体を阻害すると寿命が延び、免疫系の衰えが緩和されることが示されている。この発見に基づき、Joan Mannickらは、TORC1を阻害することで高齢者の免疫機能を保護できるかどうか検討する臨床試験をデザインした。65歳超の健康ボランティア264名を登録し、4群に分けた。3群には2種類のTORC1阻害薬、RAD001またはBEZ235を異なる用量で6日間投与し、1群にはこれらの2つの化合物を低用量で投与した。その結果、2つの阻害剤をともに投与した群は投与開始後1年間、プラセボを投与した群(1人あたり2.41件)と比較して全ての感染症の発症率が最も低かった(1人あたり1.49件)。さらに、投与被験者は、投与終了の2週間後に投与した季節性インフルエンザワクチンに対する免疫反応が改善された。Mannickらは、今後の研究では、投与の有益な効果がどの程度長く継続するのかをさらに評価するとともに、感染率の低値の原因となる機構を決定すべきだと述べている。
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Journal
Science Translational Medicine