アメンボが移動のためにファンのように使用する中足を進化させた2つの遺伝子が発見された。それは流れの速い川という環境を生き抜くためには必須だったという。今回の研究結果では、ファンの役目を持つ中足という環境への適応における分類群限定遺伝子(つまり特定の生命体に固有の遺伝子)の中心的役割が注目された。機能拡大につながる種に特異的な特徴の変化‐植物の花、昆虫の羽、鳥の羽毛など‐は多様性をもたらす重要な要因であり、様々な環境への生命体の適応を促進すると考えらえている。そういった変化は新しい目的での既存遺伝子の活用もしくは分類群限定の遺伝子の出現に起因すると考えられている。入手可能なエビデンスの大半は前者を支持しており、後者を支持する明白な例は依然として少ない上に、生命体が新しい環境で繁栄する可能性に関係する適応についての実証も乏しい。Maria Emília Santosらは理解を深めようと、アメンボ属Rhagoveliaの中足にのみ見られる推進力を与えるファンのような構造の進化の根底にある遺伝メカニズムと環境が生み出す圧力を慎重に調査した。Santosらは遺伝子発現と機能および行動試験を組み合わせ、ファンの発達を制御している2つの分類群限定の遺伝子を発見し、geishaとmother-of-geishaと名付けた。geisha はRhagovelia系統群の根元での重複イベントに由来するもので、どちらの重複遺伝子もファンの発達を示唆する特定の細胞集団で発現したとSantosらは報告している。これらの遺伝子重複は予想外の環境へのアメンボ属の適応に中心的役割を果たし、さらに、分類群限定の遺伝子の進化により未踏の生態的ニッチへの参入が可能になることが示された。
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