東京大学 生産技術研究所の増渕 覚 特任講師と町田 友樹 教授は、グラフェンをはじめとする原子層を、ブロックを積むように自在に積層するシステム「複合原子層作製システム」(2DMMS:Two-dimensional materials manufacturing system)を開発した。
2004年に、2次元シート状の原子層が実現されて以来(2010年ノーベル物理学賞)、原子層を積み重ねることで、個々の材料が持つ特性を融合した複合原子層を生み出す研究が世界中で進められている。2−3種の有用な原子層を3−5層積み重ねるだけでも、グラフェンを超伝導化したり、電流を流すことで発光する素子を作製したり、磁場により抵抗値が切り替わる素子が実現できるなど、有用な機能が得られることが報告されている。
しかし、原子層の組み立て工程は、世界中のどの研究室でも依然として研究者の手作業により行われている。研究の進展とともに、求められる構造が複雑化し、組み立てに必要な時間が大幅に増え、新規材料や物理現象の発見にたどりつく効率が低下していることが課題だった。
今回開発した2DMMSを利用すると、熟練した研究者の手作業に比べ1−2桁も作業効率が向上し、1時間あたり数百枚のグラフェンを探索し、8時間で29層から成る複合原子層を作製することが可能となった。
今後は、さまざまな複合原子層の高速試作をロボットに任せ、研究者が物性測定や解析に専念することで、科学発見の効率を飛躍的に高めることが可能となる。
本研究成果は2018年4月12日(英国時間)に英国Nature Publishing Group発行の「Nature Communications」オンライン版に掲載された。
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Nature Communications