科学者らは、市販のスマートウォッチを用いて、パーキンソン病の患者で運動の問題と振戦を検出できるモニタリングシステムを開発した。このシステムが、患者343例(うち225例が6ヵ月間の追跡調査を受けた)を対象とした研究で検証され、評価結果は被験者の94%で臨床医の推定値と一致した。この結果から、このプラットフォームにより、患者における病態の進行のモニタリングとそれに応じた投薬計画の調整を遠隔で可能にすることで、転帰を改善できることが示唆される。パーキンソン病は、自発的運動の障害(ジスキネジア)および振戦の発現を特徴とし、これらは患者のQOLを大きく損なう。これらの症状は、薬物療法によって治療可能であるが、患者で最も良好な反応が得られるのは、症状の重症度に応じて医師が用量を正確に調節でき、薬物レジメンを変更できる場合である。しかし、医師は現在、患者の評価を頻繁でない臨床診療時に行っており、症状の微細な変化を把握することができない。Rob Powersらは、自分らが開発したMotor fluctuations Monitor for Parkinson’s Disease(MM4PD)を用いてこの問題に取り組んだ。MM4PDは、スマートウォッチ・センサーを用いて、装着した患者における運動パターンについて日ごとの変動を把握するための、一連のアルゴリズムから成る。このシステムにより、スマートウォッチを装着した患者225例において、6ヵ月間にわたり振戦とジスキネジアの重症度のパターンが特定され、医師自身がこれまでの評価では見落としてきたと認めた、症状の変化を検出した。さらに、MM4PDにより新たな振戦や障害の発現を徴候が記録され、これらは適切な治療を行うために投薬スケジュールの変更を必要とする可能性のあるものであった。Powersらは、このプラットフォームは、患者に服薬遵守の動機づけを行ったり、創薬のためのコンパニオン診断法として用いたりするなど、他にも様々な応用が可能であると述べている。
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Journal
Science Translational Medicine