News Release

がん悪化や炎症を主導するマクロファージの源となる細胞を発見

Peer-Reviewed Publication

Tokyo Medical and Dental University

Identification of Human Common Monocyte Progenitor (cMoP)

image: Monocytes arise from hematopoietic stem cells (HSCs) via sequential intermediate progenitors in the bone marrow (BM), and inflammation can prompt tissue-infiltrating inflammatory monocytes to differentiate into macrophages and monocyte-derived dendritic cells (DCs), which are associated with inflammatory diseases. A common monocyte progenitor (cMoP) that is restricted to the monocyte lineage has been identified in mice but not in humans. view more 

Credit: Department of Biodefense Research, Medical Research Institute,TMDU

東京医科歯科大学・難治疾患研究所・生体防御学の樗木俊聡(おおてき としあき)教授らの研究グループは、東京医科歯科大学で行った研究成果として、ヒト単球のみを生み出す源の細胞を発見しました。この研究成果は、国際科学誌Immunity(イミュニティ)の2017年5月16日付オンライン速報版で公開されます。

【研究の背景】

生後、単球は骨髄で作られ、がんの発生や炎症に伴い血液から当該組織に入り込み、マクロファージに分化して、それら疾患病態の進展・増悪化に関与します。がん組織では、腫瘍関連マクロファージ(TAM)として、がん細胞の増殖・浸潤・転移を直接促す因子を放出する一方、がん細胞を破壊するキラーT細胞をはじめとする免疫細胞の働きを抑制することによって、がん細胞監視機構を麻痺させます。TAMの存在とがんの悪性化には高い相関性が報告されています。炎症性腸疾患では、単球は腸粘膜で炎症惹起マクロファージになりTNFαを大量に産生して炎症病態を悪化・拡大させます。TNFα阻害剤は炎症性腸疾患治療薬として奏功しています。それら疾患以外にも、単球由来のマクロファージや破骨細胞は、肥満や動脈硬化、組織の繊維化、骨粗鬆症などへの積極的関与が報告されています。

 一方、ヒトにおいて、単球がどの様な細胞から作られるのか、単球のみを作る源になる細胞が存在するのかなど、多くの点が不明でした。当該細胞を起点とした単球分化経路が明らかになると、がんや難治性炎症疾患の治療戦略に道が拓けるため、その同定が急がれていました。

【研究成果の概要】

研究グループは、ヒト単球の分化経路を明らかにするため、臍帯血または骨髄細胞を用いてさまざまな表面分子のスクリーニングを行い、ヒト単球に高発現するCD64とCLEC12Aに着目しました。ヒト臍帯血や骨髄中には、顆粒球と単球への分化能を併せ持つGMP(granulocyte and monocyte progenitor)という前駆細胞が報告されていました。研究グループは、このGMPがCD64とCLEC12Aの発現レベルによって4つの亜集団に分かれることを見出しました。そして各分画の分化能を解析したところ、CLEC12AhiCD64hi分画は単球のみに、CLEC12AhiCD64int分画は単球と顆粒球に分化しました。これら2分画はリンパ球への分化能を完全に欠落していることも確認しました。残り2つの分画は雑多な前駆細胞の集合体でした。これらの結果から、CLEC12AhiCD64hi分画が単球のみを数多く産生する前駆細胞と結論付け、ヒト共通単球前駆細胞(human common monocyte progenitor, cMoP)と定義しました。これまでGMPと定義されていた前駆細胞は、CD64とCLEC12Aの発現パターンによって細分化できる複数の前駆細胞の集合体であることが判明し、研究グループは、その中の1つがヒト単球のみを多く産み出すcMoPであることを証明しました。

【研究成果の意義】

本研究成果において、研究グループはヒト単球の源であるcMoPの同定に成功し、同細胞を起点としたヒト単球の分化経路を明らかにました。ヒトcMoPは多くの単球を作り出し、単球はがん組織で腫瘍関連マクロファージ(TAM)、炎症性腸疾患で炎症惹起マクロファージ、骨疾患で破骨細胞に各々分化することが予想されるため(図)、ヒトcMoPを標的とした新規治療法の開発が期待されます。現在製薬企業との共同研究で、ヒトcMoPを標的とした治療薬の探索を進めています。

【論文掲載情報】

掲載誌: Immunity

論文タイトル: Identification of a human clonogenic progenitor with strict monocyte differentiation potential - a counterpart of mouse cMoPs

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