News Release

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に向けて、少しずつ

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

大型動物モデルで、CRISPRゲノム編集を用いて、ジストロフィン遺伝子の発現レベルをヒトで治療できるレベルまで高めることができた。やるべきことはたくさん残っているが、この研究は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療法開発への道の進展を示している。DMDは、筋肉の機能に重要なタンパク質、ジストロフィンの遺伝子の変異(発現を阻害する変異)により生じる。この遺伝子の発現を正常レベルの15%まで促進すると、DMD患者に重要な治療ベネフィットが得られることが研究で明らかになっている。DMD患者に対して承認されている遺伝子治療では、ジストロフィンの発現を、正常レベルの約1%に回復させることができる。CRISPR/Cas9法は、マウスとヒトの細胞のジストロフィン発現を改善できることが明らかになっているが、この方法の臨床応用に向けた重要な段階は、大型の動物モデルで有効性を実証することである。今回、このようなエビデンスを得るために、Leonela AmosaiiとEric Olsonらは、ウイルスベクターを用いて、DMDを示す遺伝子変異が自然に生じた2ヵ月齢のビーグル犬の筋肉に、CRISPR遺伝子編集コンポーネントを直接送達した。治療の6週間後に動物の筋肉を解析したところ、ジストロフィンの発現は、一部の筋線維で、正常レベルの最高60%まで回復していた。顕微鏡での検討では、治療した動物の筋肉完全性が改善していたことが明らかになった。別の実験で、AmosaiiとOlsonらは、同じウイルスベクターを用いて、2匹のビーグル犬の血流中に遺伝子編集コンポーネントを送達した。8週間後、著最高用量の投与を受けた動物は、ジストロフィン発現が顕著に促進されており、骨格筋は正常ジストロフィンレベルの25~70%、心筋は正常レベルの92%であった。予備的な解析では、この治療によって問題のある免疫系の応答は起きなかったことが示された。これらの大型動物のデータは、さらに開発を行えば、遺伝子編集アプローチが臨床的に有用なDMD治療法となり得る、という概念を裏付けているとAmosaiiとOlsonらは述べている。しかし、研究者がこの方法をヒトで臨床評価できるまでに行うべき研究は、まだ多く残されている。

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