移動性有蹄類の「サーフィン(遊動)能力」を追跡することで、遊動生活をする地球上の哺乳類の大移動は、地域情報を文化的に交換することで発達し、存続してきたことが判明した。バイソンやエルク、野生ヒツジといった移動性有蹄哺乳類は、毎年、辺り一面に春が訪れて新芽が吹き出すと、その美味しい葉を追って遊動を始める。この「緑の波」は長距離にわたって有蹄類の大群を養える長期的に入手可能な食料源で、これにより移動する動物の適応度は強化される。しかし人間活動がこれら有蹄類の遊動行動の大きな妨げとなり、結果、バイソンのような多数の有蹄類は遊動しなくなり、食料である緑の波を遊動する方法を忘れつつある。遊動行動の発達や維持における社会的学習の役割について生態学者らが思索してはいるが、実験的検証はされていない。 Brett Jesmerらは今回の研究で、先住の群れ、再定住して数世代の群れ、新参の群れのオオツノヒツジとヘラジカをGPS追跡し、緑の波を遊動する(質の高い食料を追って移動する)能力を評価した。Jesmerらは各群れの遊動行動に明確な相違があることを発見した。再定住した群れは先住の群れほど効率的に遊動しておらず、一方、新参の群れは全く遊動していなかった。Jesmerらによると、再定住した群れはその地域にいる期間が長ければ長いほど、緑の波を遊動する能力が高いという。この結果は、有蹄類は緑の波を捕らえて乗る方法について時間をかけて知識を蓄えること、および、社会的学習によってこの情報の文化的伝達が可能になることを示している。関係するPerspectiveではMarco Festa-Bianchetがこの研究結果の意義について議論している。
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