新しい研究の報告によると、研究者らはコウモリが飛行する際の目的地を示す神経細胞の小集団の特定に成功したという。この結果によりコウモリがA地点からB地点へと飛ぶ仕組みの解明に貴重な見解が得られた。自分の位置と方位についての神経細胞による情報表現の解明には多数の研究から手掛かりが得られてきたが、空間的目的地が脳で符号化される仕組みについては解明されていなかった。解明を進めるためにAyelet Sarelらは、エジプトルーセットオオコウモリを訓練し、複雑な経路で飛行させ、食事と休養を取ることができる目的地と定めた特定の場所に着地させた。そしてコウモリがこの課題を終えるまでの間、無線電気生理学装置で個々の海馬の神経活動を記録した。神経細胞の約19%が「チューナー」として機能していること、それらは目的地への飛行経路の方向の角度により活動が異なっていることが判明した。Sarelらはまた、現実の飛行中コウモリは目的地を見ることができない、つまり、目的地に向かう飛行は記憶を必要とすることにも注目した。そこで彼らは不透明なカーテンで目的地を覆い、視覚、反響定位、嗅覚を遮断して、2つ目の実験を行った。かなりの神経細胞(158のうちの43、つまり27%)が見えない目的地へと方向をチューニングしていたことから、目的地を目指す神経細胞も記憶していることが判明した。目的地の位置が変わると、目的地を目指してチューニングを行う神経細胞が一部変わり、これは神経細胞には目的地別のものがあることを示している。最後に、目的地までの距離を計算する役割を担う神経細胞のサブセットも特定した。目的地までの距離を計るこれらの細胞の大部分は、コウモリが目的地に近づき、0~2メートルという短い距離になったときに発火が最大になった。
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