写真の分析を行うニューラルネットワーク・システムは、前がん皮膚病変の疑いのある病変をランク付けし、識別することができる。前がん皮膚病変は、早期に発見して切除しないと、致死的になる皮膚悪性腫瘍であるメラノーマ(悪性黒色腫)に進行する可能性がある。今回ニューラルネットワーク・システムにより、患者68例において疑わしい病変が正確に評価され、皮膚科専門医による実証済みの評価とほぼ一致した。この結果から、このプラットフォームは、医師が診察時に疑わしい病変をより速くより広い範囲で見分けることを助けることで、早期診断と早期治療ができるようにする可能性がある。メラノーマは、皮膚がんの中でも最も致死率が高い病態であるが、病変がまだ薄く、皮膚の深層まで広がっていない疾患早期の段階でメラノーマを切除した患者では、転帰は非常に良好となる可能性がある。メラノーマのスクリーニングのために、医師は通常ABCDEの基準セットを用いて皮膚を広い面積にわたって評価を行い、前がん病変の徴候を示す「醜いアヒルの子」の病変を探すことになる。保健当局は、メラノーマの負担を低減するために大規模な皮膚がんスクリーニングプログラムの展開も開始しているが、クリニックには大人数の患者を評価することができる拡張可能なツールがない。今回Luis Soenksenらは、ニューラルネットワークに基づくプラットフォームをデザインし、皮膚病変の写真を撮影して(携帯電話のカメラで撮影したものであっても)精密検査を必要とする疑わしい徴候を迅速に同定できるようにした。著者らは、患者133例から得た38,283枚の写真を用いてこの技術のトレーニングを行い、この方法によって疑いのある病変を疑いのない病変から、感度90.3%および特異度89.9%で識別したことを確認した。別の実験では、この方法により患者68例の皮膚で病変を「醜いアヒルの子」とランク付けし、これは3名の皮膚科専門医による評価とほぼ一致していた。著者らは、この技術のさらなる改善、例えばより広角のカメラ、ライト設定、撮影設定の機能によって、現在あるいくつかの限界に対応できると考えられる、と付け加えた。
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Journal
Science Translational Medicine