News Release

抗菌薬の存在下で細菌はいかにして抗菌薬耐性を獲得するのか

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新たな研究で得られた残念な結果から、細菌の増殖を阻止するはずの抗菌薬が存在するにもかかわらず、抗菌薬耐性が細菌細胞の間でいかにして伝播するのかが明らかにされている。今回の結果は、最初は抗菌薬感受性であった細菌が抗菌薬に曝露された場合に、新たに獲得した耐性遺伝子を発現するまで十分長く生存する能力があり、抗菌薬に対して効果的な免疫をもつようになることを示している。このプロセスの基礎にあるメカニズムは、ほとんど全ての細菌に存在する薬物排出ポンプを含め、抗菌薬耐性と闘う際の標的となる。細菌は、細菌同士が接合する場合と同様に、遺伝子の水平伝播メカニズムによって他の細菌からプラスミドと呼ばれるDNA断片を受け取ることで、新しい遺伝子を獲得することができる。これにより多くの場合、プラスミドを受け取った細菌細胞は、抗菌薬耐性に関するものを含め有利な遺伝子を得ることになる。臨床使用されている抗菌薬の全てではないとしても、そのほとんどに対する耐性遺伝子を1つ以上保有する薬物耐性細菌において、幅広い種類の接合性プラスミドがこれまでに同定されている。細菌同士の接合は、病原性細菌において薬物耐性が拡散する主要な手段であるが、このプロセスの多くの側面はほとんど解明されておらず、in vivoでの検討による報告が待たれている。Sophie Nolivosらは、ライブセル顕微鏡と、プラスミドの伝播をリアルタイムかつ細胞レベルで可視化するための新規システムを用いて、テトラサイクリン耐性遺伝子を1つ保有する1つのプラスミドについて、テトラサイクリン耐性大腸菌から、最初はテトラサイクリンに感受性であった別の大腸菌への伝播のプロセスを追跡した。プラスミドにコードされる遺伝子が伝播された直後に、プラスミドを受け取った細菌において、テトラサイクリン耐性を仲介する蛋白質であるTetAが速やかに産生された。ところが予想しなかったことに、Nolivosらは、最初は抗菌薬感受性であった細菌が、テトラサイクリンに曝露され、蛋白質合成を阻止する作用を受けたにもかかわらず、やはり耐性因子TetAを産生することができ、プラスミドの交換によりテトラサイクリン耐性を獲得できることを観察した。これらの結果から、このような耐性獲得能力は細菌のAcrAB-TolC多剤排出ポンプに由来し、このメカニズムがテトラサイクリンによる耐性遺伝子発現阻止の作用を抑制するとともに、抗菌薬耐性の確立を可能にしていることが示唆される。関連するPerspectiveでVanessa PovoloとMartin Ackermanは、この研究について詳細に論じている。

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