現在われわれが楽しんでいる甘い食用のアーモンドは、毒性化合物アミグダリンの生成と蓄積に関わる遺伝子の点変異のおかげで、苦い野生の祖先とは全く違うものになっていることが、完全なアーモンドのリファレンスゲノムを明らかにした新しい研究で示された。議論は行われているが、アーモンドの木の最初の栽培化は近東で完新世前半のいずれかの時期に始まったと考えられており、このことは古代エジプトとギリシャのナッツの初期の考古学的証拠により支持されている。野生のアーモンド種は、苦く毒性のある青酸配糖体アミグダリンを蓄積する。しかしこれまでの研究から、最初の栽培化が、食べられない野生型に由来する食用の甘い仁の遺伝子型を選抜することで可能になったことが示唆されている。最初の栽培化以来、アーモンドは地球上で最も広まったナッツ類となっている。しかし、アーモンドの分布と経済的重要性にもかかわらず、この植物のゲノムの詳細な理解はバラ科の植物などの他の種に後れを取っていた。甘い食用のナッツを作り出せる遺伝子の性質はまだわかっていない。今回、Raquel Sánchez-Pérezらが、アーモンド(Prunus amygdalus)の完全なリファレンスゲノムを明らかにした。また、アセンブルした配列を用いて、毒性のある苦いアーモンドと甘いアーモンドの遺伝的差異を解明した。それにより、甘い仁の遺伝子型に関連する転写因子のクラスターが発見された。このうちbHLH2が毒性化合物アミグダリンの産生の生合成経路の制御に関与していることが明らかになった。結果から、bHLH2の変異によってアミグダリンの産生が抑制され、その結果甘いアーモンドの遺伝子型が生み出されて、栽培化中に積極的に選抜されたことが示された。
###
Journal
Science