News Release

光誘導マイクロロボット

~レーザー光とプロジェクターによるミドリムシの位置制御~

Reports and Proceedings

Toyohashi University of Technology (TUT)

図1 ミドリムシ集団の補足と移動のメカニズム。

image: ミドリムシの負の走光性(青色光から反射する性質)を利用し、赤色スポット内にその位置を制御する。 view more 

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<概要>

豊橋技術科学大学の研究者らは、インド工科大学マドラス校及び岐阜工業高等専門学校と共同で、レーザー光とデジタルプロジェクターを使用してミドリムシの位置を制御するシステムを開発しました。この技術により、負の走光性を有するミドリムシの正確な時空間操作が可能になり、標的ドラッグデリバリなどの高度な生物医学的応用の可能性が開かれます。

 

<詳細>

永井萌土教授率いる研究チームは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)と青色レーザーを組み合わせ、ミドリムシ(E. gracilis)の集団を捕捉、収集、誘導できる動的な光パターニング技術を開発しました。この照射システムでは、1 mm以上の一方向移動を約100秒で実現し、従来の20分〜1時間よりも大幅に速い応答時間を達成しています。

これまでの研究でもミドリムシの光応答性は多く報告されていましたが、本研究では光の単色性と干渉性がもたらす影響についても調査しました。本研究の共同筆頭著者である大野凌雅さん(博士前期課程学生)は次のように説明します。「私たちは、青色レーザー光を使用しました。これは、LED光と比較してスポット境界でより急峻な強度勾配を生み出せました。これは微生物制御において、重要な特性となります。」この特性により、境界でのミドリムシの反射効率が2倍以上に向上し、より効率的な微生物制御が可能になりました。

本研究では、光刺激によるミドリムシの捕捉・収集の成功、安定した微小泳動体密度を保ちながらの2 mmを超える双方向移動、さらに様々な光刺激条件下での微生物密度変化の定量分析を実証しました。光刺激によるミドリムシのこの操作技術は、光制御マイクロロボットとして、物体操作やドラッグデリバリとしての応用が期待できます。応答時間と空間精度の向上により、ミドリムシを用いたマイクロ流体デバイスの設計と制御に新たな可能性を広げます。

永井教授は「私たちの研究成果は、発展を続けるバイオハイブリッドマイクロシステム分野に貢献します。ここで得られた定量的な知見は、ミドリムシをロボットとして用いたアクチュエータやセンサの設計に役立つでしょう」と語っています。
<今後の展望>

研究チームは、生物・医学的な応用に向け、このシステムを拡張して、マイクロ流体デバイスでの微小物体操作の研究を進めています。これらのマイクロロボットは光増幅可能な微小物体を集団で動かすことができ、局所領域での信号増幅も可能にします。複数光スポットでの運動制御やミドリムシ密度の減少への対策にも取り組んでいます。

<論文情報>

Pulasta Chakrabarty, Ryoga Ono, Takuya Kohno, Shunya Okamoto, Takayuki Shibata, Tuhin Subhra Santra and Moeto Nagai, “Light-controlled spatiotemporal manipulation of Euglena gracilis in microfluidic channels”, Sensors & Actuators: A. Physical, 2025, Vol. 387, 11614. DOI 10.1016/j.sna.2025.116414

<研究助成>

この研究は、公益財団法人岩谷直治記念財団の助成を受けて実施されました。


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