研究者らの報告によると、斬新な仮想現実(VR)環境下で飛翔するイナゴについての研究は集団群生行動の古典的モデルに異議を唱えるものであったという。この研究では、イナゴは自己駆動粒子のようにただ仲間に続くのではなく、内的な認知的意思決定プロセスを頼りに群れで飛翔することを示す結果が得られた。集団運動は自然界に広く見られる現象で、従来から物理学の「自己駆動粒子」理論モデルを使って説明されてきた。大きな影響力のあるVicsekモデルといった集団行動の「古典的」モデルが、基本的な局所的相互作用 ―― 個人が自身の動きを近くにいるメンバーの動きと足並みをそろえ、合わせる ―― によって集団内でどのように大規模な協調行動が起こるかを説明している。サバクトビバッタ(Schistocerca gregaria)の群れは、広域を飛翔したり、数十億匹で群れを成したりでき、自然界における集団行動の顕著な例となっている。Sercan Sayin らは、3D仮想環境下でイナゴの幼虫が仮想イナゴと相互に作用しながら自由に動くという革新的な仮想現実(VR)システムと野外実験を組み合わせて、古典的な集団行動モデルではイナゴの群生行動を説明できないことを示した。イナゴは、群れの密度が上がると自身のそばで動くイナゴときっちり足並みをそろえるというような、従来のモデルで想定されていた一定の相互作用規則に従うのではないことをSayinらは発見した。そうではなく、イナゴは他のイナゴに引き寄せられたかのように動いた。この行動は、個人は自身の内的コンセンサスに基づいて方向を選択するという時空間に関する意思決定の極小認知モデルと一致していた。関係するPerspectiveではCamille BuhlとStephen Simpsonが次のように書いている。「Sayinらは、イナゴなどの生物が一定の時空間規則に従って行動する移動粒子だと考えるのを止め、生物はそれぞれの感覚環境に動的に反応して確率的意思決定を行うと考えるときが来たと結論付けている。」
Journal
Science
Article Title
The behavioral mechanisms governing collective motion in swarming locusts
Article Publication Date
28-Feb-2025