News Release

マウスの本能的恐怖反応を抑制する仕組みが明らかに

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

研究者らは、本能的な恐怖反応が起こらないようにできるマウスの脳の神経機構を明らかにした。この機構の機能不全が恐怖に対する不適切な反応や過剰な反応の一因と考えられると、彼らは述べている。今回の研究結果によると、これらの回路を標的にすることが恐怖に関連する障害、例えば心的外傷後ストレス障害や不安症などの新たな治療手段になる可能性があるという。接近する捕食者から逃げるといった視覚的脅威に対する恐怖反応は生き延びるために重要な本能的反応で、主に、内側上丘と水道周囲灰白質が関与する脳幹回路が制御している。通常これらの反射的な動作は自動的なもので、高次脳領域とは関係がない。しかし動物は、知覚した脅威が無害だと学習すると、これらの恐怖反応を抑制できる。ただ、本能的な反応を修正するこの学習形態を支える神経機構と脳領域は依然としてほぼ解明されていない。迫り来る視覚刺激に反応しての逃避行動は本能的恐怖を測る確立された尺度であり、経験の浅いマウスは通常、そういった脅威に遭遇するとシェルターに逃げ込む。Hara Mederosらは1つの実験を考案した。その実験では、マウスはプロジェクターから出力された視覚刺激の脅威 ―― 3秒間に3回連続で拡大する黒い点 ―― のそばを通ってシェルターに逃げ込めないようになっている。時間が経つにつれ、マウスは黒い点から逃げないことを学習した。Mederosらは、この学習過程の様々な段階で光遺伝学的手法を用いて、後外側高次視覚野(plHVA) ―― 視覚野の中の脳領域群 ―― が本能的な恐怖反応の抑制の学習に不可欠であることを発見した。ただ、いったん行動を学習すると、その行動の維持に視覚野は不必要になる。その代わりに、可塑性が腹外側膝状体(vLGN)の下流で生じ、そこで神経細胞は経験が引き起こす抑制調節を受ける。この可塑性は、内在性カンナビノイド(eCB)シグナル伝達に依存しており、vLGN神経細胞への抑制性入力を減らし、逃避行動の抑制を促進する。脳深部刺激を介したり、これらの回路内のeCBに依存する可塑性を強化したりするなど、これらの経路を標的にすることで不適切な恐怖反応の抑制が助けられる、それが可能性のある新たな治療方法になると著者らは述べている。


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