市民参加と機械学習で地域の持続可能なモビリティを目指す
この度開催されたアイデアソンで、地域の公共交通改善を目指す日欧の共同研究プロジェクトが始動しました。
Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University
地形の起伏が多く、マイカーが主な移動手段となっている沖縄では、利便性が高くて環境に優しい交通手段を提供するのはなかなか簡単なことではありませんが、脱炭素化と地域社会のインクルーシブな移動を実現するためには、持続可能な交通手段の導入が求められています。この度、市民参加型の革新的なアプローチを通じて、沖縄県恩納村・うるま市石川地域において、持続可能で利用しやすい公共交通手段の発見を目指す新しい研究プロジェクト「スマート交通のための主体的ソーシャル基盤(SO-SMART)」が立ち上がりました。2024年12月5日、プロジェクトの発足に際し、国や自治体の専門家や国内外の研究者が沖縄科学技術大学院大学(OIST)に集まり、OISTのある恩納村とすぐ近くのうるま市石川地域の住民と共にアイデアソンを開催しました。
この研究プロジェクトは、コストのかかる新たな交通手段を新たに創出するのではなく、既存の公共交通手段を最適化するために、携帯アプリなどのモジュール式のインタラクティブなプラットフォームの構築を目指しています。例えば、様々な路線バスやシャトルバスの運行会社や時刻表の概要を一元的に提供したり、ビッグデータや機械学習を活用して新たな交通手段を模索したりといったものです。SO-SMARTプロジェクトは、プロジェクトの設計から実装まで、すべての段階に地域住民が関与する研究アプローチを取っています。OISTの機械学習とデータ科学ユニットのリサーチフェローで、このプロジェクトの発起人の一人であるChristophe Claramunt博士は「長期的な交通ソリューションを創造するためには、プロセス全体を通じて地域の皆様に参加していただく必要があります。地域住民は自分たちのコミュニティや個人のニーズを最もよく知る存在です。住民の視点を研究プロセスに取り入れることで、革新的な設計ソリューションを生むことができるのです」と語ります。
SO-SMARTプロジェクトは、当該地域の公共交通機関の改善に向けた第一歩を踏み出すだけでなく、将来的には県内外、そして海外でのスマートな交通システムの構築を目指す今後のプロジェクトのケーススタディとしても重要な役割を果たすでしょう。「この研究設計が、恩納村・うるま市石川地域のみならず、世界中の交通問題に対する革新的な解決策を見出すためのプロトタイプになることを狙っています」とClaramunt博士は話します。
今回のアイデアソンは、OIST客員プログラムセクションが主催しました。沖縄におけるモビリティの課題や、全国でバリアフリーの公共交通ソリューションを創出する草の根の事例研究、電気自動車の未来に関する講演の後、地元自治体の代表者、国内外の研究者、地元企業の経営者、そして地域住民の方々からなるグループを作り、グループ内で(Specific, Measurable, Achievable, Realistic, and Timely:具体的、測定可能、達成可能、現実的、タイムリー)な交通ソリューションについて議論しました。議論は、沖縄や日本の交通の現状に関する統計や、日常生活における移動手段の重要性を実感させるような話をもとに行われました。恩納村の住民の一人は、公共交通機関が十分に整備されておらず、交通渋滞がひどい地域で子どもたちを学校に送り、仕事に行くことの難しさを語りました。
グループセッションでは活発な議論が交わされました。ある参加者は「バス会社の代表者や研究者をはじめ、さまざまなステークホルダーが集まり、楽しみながら意見を交換している様子がとても興味深かった」と話していました。この研究プロジェクトはまだ初期段階ですが、参加者たちが持続可能で利用しやすいモビリティの実現に向けて、共通の決意と熱意を持って取り組んでいる様子が伝わってきました。
アイデアソンでは、最後に、各グループがさまざまな取り組みのアイデアを発表しました。シンプルな公共交通手段の提案から、SO-SMARTの成功を測るための指標設定に関するターゲットフレームワーク、アプリを通じて市民のニーズを把握し、地域間のコラボレーションを促進する取り組みまで、多岐にわたりました。OISTのSO-SMARTプロジェクトマネージャーであり、客員プログラムセクションのマネージャーであるジョナス・フィッシャー博士は、「国際的な専門家と沖縄の地域社会を結び、恩納村・うるま市石川地域においてさらに持続可能で利便性の高いモビリティに貢献するソリューションを共創し、スマート交通ソリューションに関する世界的な研究に貢献することを楽しみにしています」と述べています。
SO-SMARTは、ハンガリーのセゲド大学、トルコのカラビュック大学、フランスの西ブルターニュ大学、そして日本の京都工芸繊維大学(KIT)、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)、沖縄科学技術大学院大学(OIST)による共同研究です。この度、欧州と日本の科学技術・イノベーションの協力を促進・支援する戦略的国際共同研究プログラム EIG CONCERT-Japan の「カーボンニュートラルな都市の実現に向けたソリューション」のプロジェクトとして採択されました。
恩納村とうるま市石川にお住まいの方は、こちらのLINEアプリから地元の交通に関するフィードバックを提供することで、研究に貢献することができます。
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