News Release

インドでは社会経済的および政治的安定が野生のトラの個体数回復を支えた

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

世界で最も人口の多いインドは、数十年にわたり、最大かつ最も象徴的な肉食動物の1種であるトラの個体数を回復させる取り組みに成功してきた。新しい研究によると、人口の密集したこの国でのトラの個体数回復の鍵となる要因は、保護、餌である獲物、平和、繁栄だという。著者らは、インドの成功はトラの個体数回復に影響を及ぼす社会生態学的要因をより幅広く研究するまたとない機会だと述べている。生態系の健全性を維持するために不可欠な地球最大の肉食動物種は、生息地喪失、獲物減少、人間との対立、違法搾取による影響を受け、絶滅が最も危惧されている。これらの頂点捕食者 ―― 栄養カスケードと生態系の健全性の維持に不可欠 ―― は、特に開発途上地域で個体数が減少しているが、生息環境分断や極度の貧困といった難題があり、保護と個体数回復の取り組みは困難になっている。かつてアジア全域に生息していたトラはその歴史的生息域の90%以上からいなくなり、21世紀初頭には野生の個体は約3,600頭しか残っていなかった。それを受けて、トラの生息する国々は2010年、2022年にはトラの個体数を倍増させるという目標を掲げ、世界トラ回復プログラムを開始した。地球上に密集する人々の一部が住んでいるにもかかわらず、インドはこの目標を達成し、現在では世界の野生のトラの約75%がインドに生息している。Yadvendradev Jhalaらは20年にわたる大がかりな全国規模のトラの監視データを利用して、高度な占有モデルと高分解能空間データセットを使って381,000平方キロメートル(km²)にわたるトラの生息域について分析を行った。その結果、この20年でトラの生息地は年間約3,000 km² ずつ拡大しており、現在の生息域の大部分(45%)はインドの6,000万の人々との共有であることが判明した。保護地域は獲物種が豊富で、避難場所になるという極めて重要な役割を果たしており、そのおかげでトラはその周辺の様々な目的で使用される土地での生息が再び可能になった。しかし、極度の貧困、武力衝突、生息地喪失の影響を受ける地域では、トラがいない局所的な絶滅が続いており、個体数を確実に回復させるには社会経済的および政治的要因が重要であることが浮き彫りになった。「インドでのトラの個体数回復の成功から、トラが生息する国々もその他の地域も、大型肉食動物を保護しつつ生物多様性にも地域社会にも同時にプラスになる重要な教訓を学ぶことができる。それによって、生物多様性に富んだ人新世への期待が再び膨らむ」と、Jhalaらは書いている。


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