【ポッドキャスト】 芸術を通して科学体験の方法を変える―アーティスト、スプツニ子!さんが登場!
OIST初の客員アーティストは、展覧会で、サンゴ礁の健康状態に関するデータを新たな芸術体験へと昇華させました。
Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University
スプツニ子!(Sputniko!)さんは、芸術とテクノロジーを融合させて、社会問題を探求している日本と英国のアーティストです。彼女の作品は、科学的な概念と新しい技術を融合させることで、私たちの視点に疑問を投げかけ、重要な社会問題や環境問題を浮き彫りにしています。
この度、OISTのサイエンスライター マール・ナイドゥ―が、OISTポッドキャストでスプツニ子!さんにインタビューしました。
スプツニ子!さんは、科学者とのコラボレーションも頻繁に行っており、遺伝子組み換え技術と文化的な神話を組み合わせた蚕を用いた「Red Silk of Fate」プロジェクトはその一例です。「運命の赤い糸で結ばれた二人」というアジアの神話から着想を得たスプツニ子!さんは、農研機構(NARO)の研究領域長で東京大学教授の瀬筒秀樹氏と共同で、「愛情ホルモン」として知られるオキシトシンを含む遺伝子組み換えした赤い蚕を作り出しました。
今回のポッドキャストでは、スプツニ子!さんが自身の芸術活動のきっかけと課題について語り、科学とテクノロジーが作品の中心的なテーマとなっていることを説明しています。また、11月29日から1月9日までOISTトンネルギャラリーで開催された展覧会「コーラルカラーズ」のインスピレーションについても語ってくれました。
「可能性」とは?
ロンドン大学インペリアル・カレッジで数学とコンピューターサイエンスを学んだスプツニ子!さんは、ともに数学教授である両親から数理科学の道に進むことを期待されていました。しかし、テクノロジーを創造することへの情熱と、それが社会に与える影響への好奇心から、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)修士課程への入学を決意しました。
スプツニ子!というユニークなアーティスト名は、高校時代のあだ名に由来しています。同級生よりも背が高く、理系科目が得意だったことから、このあだ名が付けられました。25歳までに彼女の作品は大きな注目を集め、複数の著名な美術館で展示されるようになりました。
「美術館に行って、アート作品を見るのが好きなのは、新しいアイデアが浮かんだり、新しい視点が得られたりするからです。『そうか、物事にはこういう見方があるのか』とか、『こういう視点があるのか』と気づかされるんです」とスプツニ子!さんは振り返ります。「私の作品を通して、人々があらゆることの可能性や意味について考えたり、人間社会がどこに向かっているのかについて考えたりしてくれたらうれしいです。」
研究を視覚的なストーリーに変換する
現在、東京藝術大学の准教授であり、OIST初の客員アーティストでもあるスプツニ子!さんは、「コーラルカラーズ」と題した展覧会をOISTで開催しました。このインスタレーションでは、データの可視化により、長期間にわたる水温変化とサンゴの健康への影響を示し、地球温暖化が海洋生態系に与える影響について認識を高めることを目的としています。
「コーラルカラーズ」には、サンゴを表現したアート作品や映像作品が展示されており、それらは沖縄のサンゴの白化率を反映しています。気象庁が124年間にわたって収集した気温データを使用し、海水温の上昇とサンゴの白化の関連性を浮き彫りにしています。白化は、サンゴがストレスにより共生する藻類を失うことで起こります。
「(展示の)映像を見ると、1900年代の数字があり、それが2024年までカウントアップされていきます。時が経つにつれ、色が本当に大きく変化していくのが分かります。これはすべて温度データを反映させたもので、特に2000年代前後で温度上昇が急激に加速しています。すべてが視覚化されているので、2000年代以降、白化現象がより速いスピードで起こっていることが分かります」とスプツニ子!さんは説明します。
「コーラルカラーズ」の作品は、OIST初のオンチェーン・アートとしてArtBlocksで購入いただけます。一部収益はOISTの科学研究に充てられ ます。
12月7日には、スプツニ子!さんと、OIST海洋気候変動ユニットのティモシー・ラバシ教授、沖縄県立芸術大学の土屋誠一教授がOIST講堂で公開講演を行いました。この講演会では、芸術と科学を組み合わせることで、サンゴ礁の保全など現代の諸問題の解決に新たな道が開ける可能性について注目が集まりました。
スプツニ子!さんは、大学卒業直後の経済的苦境や、従来のキャリアパスに適合しないのではないかという不安など、キャリアを通して、さまざまな課題に直面してきました。学際的なアプローチについては、アート界とビジネス界の両方から懐疑的な見方をされることもありました。しかし、これらの課題や時折生じる誤解を、真のイノベーションの指標であると前向きに捉えています。彼女のキャリアは、芸術、ビジネス、テクノロジーなど、複数の媒体を通じて社会変革を生み出すという強い意志を示しています。
リンク :
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スプツニ子!さんのその他の作品について:(外部リンク:SPUTNIKO.COM)
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