News Release

季節性インフルエンザワクチンの研究から、ワクチン反応における宿主の遺伝的特性が果たす役割と、ワクチンを改良する方法が明らかに

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

特定の複数のウイルスサブタイプに由来するウイルス株を含有した季節性インフルエンザワクチンの接種を受けた多くの人は、1つのウイルス株に対する強力な免疫反応を得るが、他のウイルス株による感染は防げず、研究者たちはこうした免疫反応の違いにさらなる影響を及ぼすものは何なのか、宿主の遺伝的特性なのか、それともウイルス株への過去の曝露なのかについて、長年にわたって頭を悩ませてきた。今回研究者らは、インフルエンザワクチンへの反応におけるこうした個々の差をもたらすのは、宿主の遺伝的特性が最も強力な因子であると報告している。この研究はまた、新たなワクチンプラットフォームも提示しており、動物モデルやヒトオルガノイドで検証したところ、多様なインフルエンザサブタイプに対する防御作用を高めることが示されている。インフルエンザは、毎年世界で数十万人の命を奪い、数百万件もの入院の原因となっていることから、世界的に甚大な健康上の負担であることが示されている。ヒトにおける感染は、主にA型インフルエンザ(H1N1およびH3N2)およびB型(Victoria系およびYamagata系)の特定のウイルスサブタイプによって引き起こされ、それぞれ複数のウイルス株を含有している。しかし、ワクチン接種を受けた多くの人は、含有された複数のウイルス株のうち1つの株に対してより強い反応を示し、こうして他のウイルス株に対する反応は弱くなる。「抗原原罪(OAS)」として知られる現象は、最初に曝露されたインフルエンザ株に対する免疫系の記憶が、その後に受けたワクチンに対する反応をいかに歪め、その効果を低める可能性があるかを示すものである。さらに、ヒト白血球抗原(HLA)系における遺伝子変異は、個々の人においてワクチン抗原にいかに反応し、いかにこれを提示するかを決定することで、その後の免疫反応に影響を及ぼす。インフルエンザワクチンの効果に対して、ウイルス株への過去の曝露と宿主の遺伝的特性がそれぞれどのように寄与するのかについては、あまり理解されていない。この疑問に取り組むため、Vamsee Mallajosyulaらは一卵性双生児、ワクチン接種を受けた乳児、およびマウスモデルにおける抗体反応について分析した。その結果、インフルエンザサブタイプに対する反応の偏りは主として宿主の遺伝的特性、とりわけ主要組織適合性複合体(MHC)クラスII多型が引き起こすのであり、過去の曝露は二次的な役割を果たしていることが分かった。次いでMallajosyulaらは、CD4+ T細胞活性を増強し、より広い抗体反応を惹起するスキャフォールドを介して、異なるウイルス株に由来する異種抗原を組み合わせる方法を開発した。マウスとヒトの扁桃腺オルガノイドで検証したところ、複数のウイルス株に対する抗体の産生が増加することが示され、この結果から、上記のプラットフォームには、鳥インフルエンザウイルス株を含め、ワクチンの有効性を高める可能性があることが実証された。


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