News Release

牛インフルエンザH5N1の単一変異により、ウイルス結合特異性がヒト受容体へと切り替わる

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

牛インフルエンザH5N1(北米の家畜群での検出が増えている高病原性鳥インフルエンザウイルスのクレードの1つ)の単一変異により、ウイルスの親和性が動物型の受容体からヒト型の受容体に切り替わりうることが、新しい研究で示された。遺伝子のわずかな変化でさえ、ウイルスがヒトに適応し感染できる能力を高め、将来的なインフルエンザのパンデミックを引き起こす可能性があることから、この知見は、新しいH5N1変異の継続的な監視を行う必要があることを強く示している。2021年に北米で、鳥類、海洋哺乳類、ヒトを含む広範な宿主に感染する顕著な能力を示す、高病原性インフルエンザH5N1クレード2.3.4.4bウイルスが出現した。このウイルスは2024年までに米国の乳牛に広く拡散し、米国の14州の少なくとも282の乳牛の群れで検出されている。また、ヒト感染例も数件確認されている。現在のところ、ヒト間での牛インフルエンザH5N1の感染例は確認されていないが、このウイルスの高い致死率と適応能力から、パンデミックの脅威に関する深刻な懸念が生じている。ヒト間伝播の重要な障壁はウイルスの受容体結合嗜好性であり、現時点では、ヒト受容体よりもトリ受容体に対する嗜好性が高い。しかし、過去の複数のインフルエンザパンデミックから、ウイルスのヘマグルチニン(HA)タンパク質が、結合嗜好性を動物型受容体からヒト型受容体に変える変異を獲得できることが明らかになっている。最近のH5N1クレード2.3.4.4bウイルスがヒト型受容体特異性に適応する可能性を評価するため、Ting-Hui Linらは、最初に報告されたヒト感染性牛インフルエンザH5N1ウイルス(A/Texas/37/2024、テキサス)の受容体結合部位(RBS)に標的変異を導入した。この特定のウイルス株は、鳥型受容体の特異性を維持しているが、Linらは、HAタンパク質における単一変異Gln226leuが、この受容体の嗜好性を完全にヒト型受容体に変化させ、ヒトへの感染の可能性を高めうることを明らかにした。さらに、二つ目の変異、Asn224Lysを追加すると、トリ型受容体への親和性がなくなり、2009 H1N1ウイルスで認められたパンデミックレベルに近いレベルまでヒト受容体への結合が促進される。著者らによれば、この知見は、特に家畜と近い場所で働く人や、再集合イベントを促進する可能性がある季節性インフルエンザとの共感染時のH5N1の種間伝播リスクが高くなっていることを強調している。


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