News Release

亜致死量の農薬曝露は昆虫の行動と長期的な生存性を阻害する

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

研究者らの報告によると、死には至らない低濃度であっても、広く使用されている農薬 ―― とりわけ、殺虫剤、除草剤、殺菌剤 ―― への曝露は、昆虫の行動と生理機能に広範囲にわたって悪影響を及ぼすという。この研究結果によって、生物多様性を保護するためには、致死性のみならず予期せぬ長期的な生態学的損傷にも重点を置いた、より包括的な農薬評価が必要であることが浮き彫りになった。この10年間、世界各地で起こっている昆虫の憂慮すべき多様性低下を強調した報告が多数出されており、この低下はおそらく、農業と都市化による生息地喪失、気候変動、及び広範囲にわたる農薬使用によるものと考えらえる。この多様性低下について、亜致死的な - 死に至らせるには濃度が低い - 農薬曝露が重大であるにもかかわらず調査不十分な要因として浮上している。これまでの研究で、亜致死量の農薬曝露が代謝、成長、生殖、免疫、行動といった昆虫の生態の様々な面をどのように阻害するかは実証されてきた。しかし、これらの化学物質の安全性評価は、致死的曝露に焦点を当てたものが多く、非標的種が亜致死量の農薬を曝露した際の微妙な慢性的影響については依然として体系的な実験研究が不足している。Lautaro Gandaraらはこの知識のギャップを埋めるべく、毒物学的評価用の昆虫モデルとして定着しているDrosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)を用いたハイスループットプラットフォームを開発し、一連の農薬分子への亜致死的曝露による生理、行動、適応度への影響を評価した。Gandaraらは1,024種類の農薬の化学ライブラリーを用いて、これらの化学物質の57% ―― この多くは昆虫への既知の特異作用はない ―― が幼虫の行動を大きく阻害することを発見した。行動の変化に加え、彼らはリン酸基付加という蛋白質における変化の広がりも確認し、より深刻な生理学的影響があることを示唆している。自然の生息地環境で広く見られる亜致死濃度の化学結合物を用いた試験でも、D. melanogasterの成長速度と生殖生産、及び長期的生存性の低下が見られた。さらに、この研究結果から環境温度のわずかな上昇で農薬毒性が増大することも判明し、温暖化する環境条件下における潜在的リスクが浮き彫りになった。Gandaraらはまた、蚊やチョウなど、亜致死量の農薬に曝露した他の種においても同様の行動阻害が見られたことを明らかにし、更なる生態学的影響があることを示唆している。


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