研究者らは、鳥の営巣に影響するのは遺伝子若しくは環境のみという長年の主張に疑問を投げ掛け、アフリカのカラハリ砂漠に生息するマミジロスズメハタオリは、群れ特有の文化的伝統を反映した独自の建築様式で巣作りを行うと報告している。「さえずり、渡り、採餌、道具の使用といった鳥の行動の伝統は十分な解説がなされているが、私たちは今回、加えて営巣行動についても調査を行い、巣の建築様式が共に巣作りを行う仲間に由来することを明らかにした」と論文の著者らは書いている。人間が自分たちの文化特有の建築の伝統を持つことは広く知られている。これらの文化的伝統は人間社会の特徴と考えられているが、人間だけが構造物を作ったり、文化的特徴を示したりするのではない。動物の行動に見られる相違の多くはその文化によって説明できることを示す研究は増えている。鳥の営巣における相違点と一致点は、生来の性質若しくは環境要因に起因することが多いと考えられているが、エビデンスによれば主に後者が支持されている。例えば、寒冷な地域に生息する鳥ほど、断熱性の高い大きな巣を作る傾向がある。しかし研究によって、鳥は、単に環境条件に反応するのではなく、過去の経験と社会的学習に基づいて営巣行動を調節していることが判明した。これらの研究結果は、個々の経験、社会的情報及び文化的プロセスも鳥の巣作りに見られる相違に重要な役割を果たすことを示している。
Maria Tello-Ramosらによると、マミジロスズメハタオリ ―― 群れをなす鳥で、年間で1羽用のねぐらと繁殖のための巣を複数作る ―― はそれらが作った構造物の形態の群れ内及び群れ間における再現性と相違を研究する絶好の機会を提供してくれるという。Tello-Ramosらは、カラハリ砂漠で2年間にわたってマミジロスズメハタオリの43の群れが作った約450の構造物の様々な部分を測定し、その結果、互いの生息地が近いうえに遺伝子と生息地環境も似ているにもかかわらず、各群れにそれぞれ独自の建築様式があることを発見した。例えば、厚手の浅い構造物を作る群れもいれば、入口と出口が長い筒状になっている構造物を作る群れもいた。研究結果によると、こういった相違点は、鳥の大きさ、木の高さ、天候といった要因の影響を受けないうえに、鳥が群れ間を移動しても変化はなく、このことは、新しい群れに移動した鳥がその群れの建築様式に従うことを示唆しているという。つまりこれらの建築様式は、遺伝子や環境要因ではなく、社会的学習と世代を超えた群れ特有の選択傾向によるものだと言える。
Journal
Science
Article Title
Architectural traditions in the structures built by cooperative weaving birds
Article Publication Date
30-Aug-2024