News Release

ウクライナの歴史的出来事に関する研究で、出生前に飢餓を経験すると成人期の2型糖尿病発症リスクが高まることが明らかに

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

1932年から1933年にウクライナで起きた大飢餓、ホロドモールの影響を受けた人々に関する新たな研究によると、出生前に飢餓を経験すると成人期に2型糖尿病(T2DM)を発症するリスクが大幅に増加するという。飢餓が死亡率や罹患率に及ぼす即時的及び短期的影響は十分に立証されている一方で、本研究でも行ったような健康に対する飢餓の長期的な影響を明らかにするのは難しい。これまでの研究で、出生前の栄養摂取と糖尿病のような代謝異常を含む成人期の健康状態の関連性は示唆されている。しかしこれらの研究は、サンプルサイズが小さく、飢餓経験も明確ではないことから、限界があった。ソビエトの政策が原因で、極端な食糧不足によって数百万人もの死者が出るという結果をもたらしたウクライナのホロドモール大飢餓は、事態が激甚、期間が明白、調査対象の母集団サイズが大きい、詳細な資料があるといったことから、この関連性を調査する絶好の機会である。L. H. Lumeyらは今回、この期間に生まれた人々を対象に、胎児期初期における極度の栄養不足が数十年後の健康状態にどう影響するかを調査した。Lumeyらは、1930年から1938年にウクライナで生まれた1,000万を超える人々の中から2000年から2008年に2型糖尿病(T2DM)と診断された128,225の症例データを使って、生態学的研究を実施した。その結果、1933年半ばの飢餓ピーク時に胎児期初期を過ごした1934年前半生まれの人々は、飢餓を経験しなかった人々と比較して、成人期にT2DMを発症する可能性が2倍以上高かったことが判明した。注目すべきことに、胎児期中期から後期、若しくは生後数年に飢餓を経験した成人にはT2DMの増加は見られなかった。これらの結果により、極度の栄養不良が将来の健康状態に最も大きな影響を及ぼす出生前の重要な時期が明らかになり、胎児期初期の栄養の重要性が強調された。関係するPerspectiveではPeter KlimekとStefan Thurnerが、今回の研究と、食糧不足が関係する世界的な健康への脅威を理解し、防止するうえでの、本研究結果の意義について論じている。


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