News Release

温かいか冷たいか:白い鼻症候群病原体のコウモリへの感染は冬眠状態に大いに関係する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

コウモリに白い鼻症候群(WNS)を引き起こす真菌病原体は、宿主コウモリの冬眠状態 ―― 体温が低く非活動状態にある、若しくは、体温が上がり活動状態にある ―― に応じて異なる細胞侵入戦略を使う。著者らがこの結果を導き出すにはコウモリの新しい細胞株を開発する必要はあったが、この研究結果によって、食品医薬品局承認の医薬品ゲフィチニブのような上皮成長因子受容体阻害薬を用いてWNSに対する治療的介入が行える可能性が強調された。コウモリ ―― 哺乳類の中で2番目に多様性に富んだグループ ―― は、農業病害虫や昆虫媒介感染症の拡大の抑制に重要な役割を果たしている。しかし北米各地では数百万ものコウモリが白い鼻症候群 ―― 低温を好む真菌Pseudogymnoascus destructansが引き起こす致死的な新興疾患 ―― で死亡している。WNSは一部の種の95%以上の減少と一部地域での個体群全滅の原因だと考えられている。WNSが発見されたのは数十年前だが、これに感染しやすいコウモリ種の間での蔓延を阻止する実用的な方法はなく、治療法と予防戦略が早急に必要であることが強調されている。しかし宿主組織(特に冬眠中のコウモリ)にP. destructansが侵入する仕組みについて知識が不足しているため、WNSへの介入は進展していない。こういった知識不足に対処すべく、Marcos Isidoro-AyazaとBruce Kleinは小型のトビイロホオヒゲコウモリMyotis lucifugus)から新しい不死化ケラチノサイト細胞株を開発し、深冬眠時と覚醒時に似せるべく、様々な温度でP. destructansの侵入について生体内で研究した。Isidoro-AyazaとKleinは、この真菌は、コウモリが体温が低く活動しない深冬眠状態にあるのか、もしくは、体温が上がって活動している覚醒状態にあるのかに応じて、異なる戦略でその表皮細胞に侵入していることを発見した。宿主が深冬眠中でエンドサイトーシスを介した取り込みがないときは、発芽胞子からできた菌糸体がケラチノサイトに活発に潜り込む。意外にも、潜り込む菌糸が宿主細胞の免疫防御を引き起こすことはない。逆に、体温が上がってコウモリが活動状態になると、真菌はエンドサイトーシスを介してケラチノサイトに入り込む。今回の研究結果によると、どちらの感染経路も上皮成長因子受容体(EGFR)が必要で、著者らは、小分子薬ゲフィチニブと抗EGFR抗体を用いたEGFRの阻害で宿主のケラチノサイトへのP. destructansの侵入を防いだとしている。「宿主侵入は病気の発生における第1段階の1つであるとともに、病気の進行にも不可欠である」と関係するPerspectiveでJosé Vargas-Muñizは書いている。「したがって、このプロセスは冬眠中のコウモリへのP. destructans感染を減らす最有力候補である。」


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.