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ニトロプラストの存在が明らかに:海藻内にある窒素を固定する細胞小器官

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究によると、海藻に内部共生する窒素固定細菌が、窒素を固定する細胞小器官「ニトロプラスト」に進化しつつあるという。これにより、原核生物のみが担っていると考えられていた機能が、真核生物にまで拡大することになる。真核細胞は非常に複雑で、さまざまな細胞小器官を含んでいる。細胞小器官とは、生細胞内にある特殊な構造であり、特定の生物学的機能を有している。ミトコンドリアと葉緑体という2つの細胞小器官は、それぞれエネルギー代謝と光合成において重要な役割を果たしており、おそらく内部共生細菌が真核細胞に取り込まれてできたものだと考えられている。生物学的窒素(N2)固定、すなわち大気中の窒素ガスから生物学的に利用可能なアンモニアへの変換は、水生生物および陸生生物の繁殖力を維持する重要な代謝プロセスである。真核生物における窒素固定は、窒素固定能力のある多様な原核微生物との共生関係による例だけが知られている。しかし、こうした共生関係の特性については不明な点が多く、現在のところ、真核細胞において窒素を固定する細胞小器官はまだ報告されていない。Tyler Coaleらは、代謝効率のよい窒素固定シアノバクテリアであるCandidatus Atelocyanobacterium thalassa(UCYN-A)と、UCYN-Aが内部共生することが知られている単細胞の海藻Braarudosphaera bigelowiiとの相互作用を調べた。Coaleらが、軟X線断層撮影した細胞内画像を用いてこの海藻の細胞形態と細胞分裂を可視化したところ、内部共生するUCYN-Aが分裂してB.bigelowiiの娘細胞に均等に分配されるという、よく調整された細胞周期が観察された。これは、細胞小器官である葉緑体やミトコンドリアが細胞分裂時に分配される方法と類似している。さらに、プロテオーム解析とゲノム解析を行った結果、UCYN-Aには、真核生物宿主の細胞核から取り込んだ多くのタンパク質が含まれていることが分かり、そのなかには細胞代謝や細胞周期の制御に不可欠なタンパク質も含まれていた。Coaleらによると、この研究成果は、UCYN-Aが内部共生の域を超えて進化し、窒素を固定する初期進化段階の細胞小器官として機能していることを示唆しているという。関連するPerspectiveではRamon Massanaが、「ニトロプラストは、宿主の海藻に必要なエネルギー、炭素、窒素を真核細胞小器官が補完するという教科書的な事例であり、生態環境が進化の舞台であることを示す例でもある」と述べている。


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